Zaranga属更新。ウォーターハウスの図鑑。

 久しぶりのブログ。生きていたのか死んでいたのか。自分ではよく分からない期間が続いていた。表向きは生きていたようである。でも油断はできない。 11月後半から精神の糸が切れていて,精神の粒のようなものがブラウン運動的な状態にあったようだ。冬の前半はいつもこうだ。
 「みちのく会」までにナミシャクの学名については終わらせておく予定だったが全然無理。文献資料も不足していた。北大へコピー取りに行かなければならないが,年休をそうそうに消費してしまうわけにもいかない。
 
 とりあえず,アオバアオシャクの属名の"Zarange"がほぼ解明したのでHPを(やっとのことで)更新。

 後者は9年振りの改正。9年前は Wikipedia に「Zaranj」の項目はなかったはずである。ネット上には日々新しい知識が蓄積されて,わたしの過去の文章は徐々に使い物にならなくなっていく。
 せっかくブログを書いたので,Zarange属のタイプ種である Zaranga pannosa Moore, 1884 の図版を貼っておく。
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 Waterhouse, 1882-90, Aid to the identification of insects 2, pl. 161, fig.1。

 著者のウォーターハウス(1843-1917)はイギリス自然史博物館勤務。専門は甲虫の分類であるようだ。この本はとにかく贅沢な作りが目を引く。例えば第1巻の図版1
(クリック先から拡大可)
 Percosoma sulcipenne というタスマニア固有のオサムシモドキである。巻頭のセレクションとしてもただものではないのだが,1ページ1種。
 全2巻本の図版189枚のうち100枚以上が1種だけである。
 さすがに第2巻の後半からは詰め合わせ図版になる。もともとは3巻ものにする予定だったのかもしれない。
 
 ところで書名『昆虫同定の手引き』。この本にはほとんど解説文がない。だからおよそ実用的とは思えず,詐りありである。著者の序文によれば,図版にいちいち解説文を書くとただならぬ労力が必要な上に,大部な高額本になってしまうのでマズイ。原記載論文をあげておくので,そちらを参照されたい,とのこと。なるほど図版に住所が書いてある(種名の下。Bates, Cist. Ent. , II (1878), p307)。まあ卓見に属するのだろう。
 大部にしたくないなら,すべての図版を貧乏人の標本箱のように詰め合わせにすればいいと思うのだが,そういうものではないらしい。
 今のようにネットでほとんどの原記載を読むことのできる時代ではないのだから,一般の虫好きにとってはえらく不親切に思えるのだがどうなのだろう*1。きっとファインアートの画集のような気持ちで購入しなさい,という相場なのだろうねえ。
 

*1:現代だって原記載論文チェックには結構なエネルギーが必要である。しかも,読んだって同定に使えるとはわたしには思えない。そもそも,同定って本当は標本と標本との付き合わせなんでしょう。記載文では厳しい。分からない