7月30日補遺。ムラサキアツバ。

 年末の大掃除などやる気ゼロ。年末なんてどうでもいい。まとまった休日でしかない。早起きして虫のリハビリをしないでどうする。
 部屋中に産卵ではなく散乱した辞典類や図鑑や文献やらを探しながら,PCに向かう。

 というわけで,7月30日の画像から。
ムラサキアツバ Diomea cremata
 ムラサキアツバ。16mm。


 今回の『標準図鑑』で,「みんな蛾体系」シタバガ亜科(Catocalinae)から分離したムラサキアツバ亜科(Bletobiinae)に入れられた蛾(ヤガのここら辺は拙ブログ11-04-17記事を参照)。この蛾が亜科の代表みたいになっているが,『標準図鑑』によれば

 ヨーロッパに産する Parascotia 属( Bletobia 属はシノニム)を基に創設された亜科である。(2,p.191)

 とのこと。パラスコティア属が日本に分布していないため,ムラサキアツバが担ぎ出されたのだろう。パラスコティアのタイプ種である Parascotia fuliginaria はこんな蛾(「Waved Black Parascotia fuliginaria - UKMoths」)。ああ,ほとんど見た目同じ感じ。和亜科名はムラサキアツバで賛成。


 学名は Diomea cremata (読みはおそらく,でぃおーめあ くれまーた)。属名の意は原記載に当たっても例によってよく分からない。一番普通に解釈すればギリシア語由来の「 di-(2つの)+ ômos(肩)+ -ea(接尾辞)」で「両肩」の意味。ただし,“di”は「 dis(2つの)」ではなく「 dia(強調の接頭辞)」かもしれないし,“ômos”も形容詞で「生の,残忍な」の意味があったり,そもそも「 omos(同じ,共通の)」かもしれなかったりして,わたしの手にはもちろんおえない。
 種小名はずっと簡単。ラテン語の“cremo”の過去分詞で「焼き尽くされた」。確かに焼け跡から拾ってきたような色合いではある。


 ムラサキアツバは近年,シイタケの害虫として脚光を浴びているらしい。もともとはカワラタケやサルノコシカケ喰い。あまりいいものを食べていないなあ。これが人間の栽培するシイタケに進出してきたという。
 「やまぐち農林水産.ねっと」の「菌床シイタケ害虫ムラサキアツバの生態と防除対策」によれば,

 菌床シイタケ栽培が全国的に普及するに伴い、原木栽培では問題にならなかった虫が害虫として報告されるようになった。ムラサキアツバ(ヤガ科)もその内の一種である。本害虫の幼虫は、カワラタケなどの硬いキノコを食べて生育することが確認されていたが、近年、菌床シイタケの害虫として問題視されるようになった。本県では、平成16年に初被害を確認し、全菌床シイタケ生産者にアンケート調査した結果、21.4%で発生していた。本害虫の被害は主に菌床表面を幼虫が食害し、子実体の発生が抑制されることである。しかしながら、その生態についてはほとんど分かっておらず、防除法はないのが現状である。

http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a17201/00000005/ringyou2102.pdf

 「ほとんど分かっていない」のか。
 北海道でも同じらしい(「北海道病害虫防除所」の「しいたけのムラサキアツバ」)。