ホシベニシタヒトリ(3)。

 月が変わってから,毎晩うなされて夜中に目が覚める。どこにも職がなく追い込まれて行く夢。社会生活を送って賃金を得ていくことは,わたしには最もできそうもないことだ。どうしようもなく目が覚めて,ようやく自分が今職に就けていることを思い出す。恐ろしさを感じる。自分が働けているはずがない,の声が聞こえる。自分が食っていけないかもしれないことへの恐怖。


 というわけで電圧が急激に下降中。やりかけた画像チェックは週末に後回し。
 学名ネタに逃げます。


 ホシベニシタヒトリの学名は Rhyparioides amurensis (りぱりおいーです あむーれーんしす)。
 ベニシタヒトリのそれは Rhyparioides nebulosa (りぱりおいーです ねぶろーさ)。


 ※Rhyparioide 属は「Encyclopedia of Life」では,後述の Rhyparia(ゴマベニシタヒトリとか)・Diacrisia(モンヘリアカヒトリとか)もろとも Spilosoma 属に分類されている(2012/01/06)。
 ところで Spilosoma 属のタイプはキハラゴマダラヒトリ。トーシロー的には『標準図鑑』のように分離してもらった方が分かりやすい。見た感じが全然違うし。


 ※ちなみに,1901年の Hampson," Catalogue of Lepidoptera Phalaenae in the British Museum " では,こんどは Diacrisia 属にことごとく入れられている。ヒトリガのここら辺の分類は結構デリケートなところらしい。
 ディアクリシアというのも変な属名で,「分離している」の意。Emmet によれば, リンネが sannio 種(日本に分布せず。画像「Moths and Butterflies of Europe and North Africa」参照)の♂♀を別種と見なして別々に記載したことに由来する命名とのこと(EMS,p.193)。


 属名の Rhyparioides は「Rhyparia (リパリア属)+ -oides(接尾辞。〜に似たもの)」。
 原記載である " The Annals and magazine of natural history; zoology, botany, and geology "(4th ser. v. 20,1877)の,A. G. Butler " Description of new Species of Heterocera from Japan − Part I. Sphinges and Bombyces. "(http://www.archive.org/stream/annalsmagazineof4201877lond#page/393/mode/1up)の395〜396ページから拙訳。

   Rhyparioides 新属
 翅脈においては Rhyparia 属と Diacrisia 属と同じだが,胴体がより細いことで前属と,♂の触角が櫛歯状というよりは鋸歯状であることで両属と異なる。
 タイプはR. nebulosa 種。

http://www.archive.org/stream/annalsmagazineof4201877lond#page/395/mode/1up

 とても簡潔である。また触角のことが出てきて,触角で悩まされているこちらとしては不愉快である。モンベニ♂は「櫛歯」なのだが,バトラーはおそらくベニしか参照していないので仕方ない。
 ものはついで。Rhyparia はギリシア語で「不潔,汚れ」の意。前翅の模様からだろう。タイプ種はゴマベニシタヒトリ Rhyparia purpurata (りぱりあ ぷるぷらーた)。「紫・深紅の衣をきた」の意。


 種小名の方。
 ホシベニシタヒトリの amurensis は「アムール地方の」。おそらくタイプ標本がアムール産なのだろう。ごくありきたりの命名であって,九州大の「日本産昆虫目録データベース MOKUROKU」で検索をかけると種小名・亜種名で31件もヒットする。
 ベニシタヒトリの nebulosa は「霧がかかった,かすんだ」。属名と足並みがそろっている。そこまで言わなくてもいいようにも思う。


 ごめんなさい。次回こそ画像を貼ります。