Acronicta 属(2/2)。
その昔HPにも書いたのだけど。Acronicta の意味について。
平嶋『生物学名辞典』では
(…)(ギ)akronyx 日暮れ,薄暮。(…)(p.740)
からと解釈している。
Emmet,The Scientific Names of the British Lepidoptera でもほぼ同じ。(拙訳)
(…)(akronux),夕方。この蛾は薄暮性ではないから,おそらく Noctua〔夜の意〕に揃えた名前にするつもりなのだろう。(p.209)
Noctua というのは日本には分布していないモンヤガの属。ヤガ科(Noctuidae)の代表選手である。(タイプは「UKMoths」内「Large Yellow Underwing Noctua pronuba」参照)。
要するに akronyx なんだということ。
それで,Liddell & Scott の希英辞書を引いてみる。どうでもいいことにはしつこいのである。
もちろん,akronyx は出ている。「nightfall(夕方)」である。
ところが,それだけではない。akronyktos なる単語が載っている。「字義として,rising at sunset(日没時に上る,起きる)。そこから,in opposison(野党の,反対の立場で)」。
単純に考えるならやっぱり akronyctos → Acronicta だろうなあ。
どうも「夜に出てくる」程度の話ではないかと思う。だから発想としては Emmet の「Noctua とセット」という解釈でも構わないのかもしれない。でも akronyx じゃないし,「夕方」でもないと思うのであります。
まあいいや。Acronicta 返り咲き組の画像を貼ろう。
ナシケンモン Acronicta rumicis。2009年8月14日。18mm。
鳥のように丸い小さな眼がこちらを凝視していれば大抵ナシケンモン。
種小名はリンネ命名。rumix というのはスイバやギシギシ。食草だね。和名はどうして「ナシ」になってしまったのだろう。
もう1種。
ハンノケンモン Acronicta alni。2008年6月28日。測っていない。
こちらもリンネの種小名。同じく食草。こちらはハンノキの類である。今度は和名が対応しているのだが,図鑑の食草にはハンノキは出ていない。困ったなあ。