日経サイエンス2008年1月号〜渦鞭毛藻類.

 日経サイエンス2008年1月号「特集 宇宙時代次の50年」.


 「葉緑体進化のダイナミズム」,堀口健雄,pp.88〜98.

葉緑体は,真核生物の進化の初期段階に原核生物藍藻が取り込まれて(細胞内共生),細胞内小器官に変換されたもの.
この過程によって一次植物が成立する.

 そっかあ,藍藻って植物じゃなかったんだ.細菌.緑だと何でも植物のように思ってしまう.

二次植物は,(藍藻ではなく)一次植物を取り込んで葉緑体を獲得したもの.コンブ・ワカメ・ミドリムシは二次植物.

 一次植物は陸上植物や,海草ではアオノリ.これからはみそ汁のワカメを「二次植物である」と意識しながら食べなければならない.

【渦鞭毛藻類は更に複雑な細胞内共生を行っている】

  1. 渦鞭毛藻独自のタイプの葉緑体を持つもの.
  2. 新たに「緑藻あるいはハプト藻類」の葉緑体を取り込み,はじめに持っていた葉緑体と入れ替えたもの.細胞内の膜で仕切られた領域に葉緑体が収められている.
  3. 珪藻細胞を「入れ子」にしているもの.膜の仕切り内部に珪藻核・ミトコンドリア葉緑体がある.(ある種では更に異なる珪藻種の葉緑体へと乗り換える進化)
  4. 葉緑体現象.クリプト藻を取り込み,一定期間,細胞に保持して光合成を行わせてその後に消化する.


半数の種では,葉緑体を捨てて従属栄養をおこなう(捕食).「渦鞭毛虫」と呼ばれることも.
(翼片を発達させて空間を作り,藍藻を飼育する種も)


 面白い.プランクトンの世界では植物も動物も,その振る舞いの区別は曖昧である.訳の分からないことが水中では進行しているらしい.生存競争とか弱肉強食という用語がここにも適合するのだろうか.こいつらはそもそも何なのだろう.


 古代インド人は輪廻の輪から植物をはずした.現在の科学的知見では植物と動物の差異は本質的なものではない.
 でも,である.彼らの慧眼はそのはるか向こう側を見通しているように,わたしには思えて仕方ない.


 筆者のサイト「Hokkaido Univ. Dinophyceae ようこそ渦鞭毛藻類の世界へ」.面白い.