属名ネタその2.ドクガ科のCalliteara属.

 アカヒゲドクガ,リンゴドクガの属名Calliteara.これが分からなかった.仕方ないので調べ直し.
 「Calli」は「kallos 美」で,これは問題なし.
 「teara」が分からない.辞典をもう一度探して,「Tearos」.これは男性名詞なのだが,女性へと変換すればtearaになり得る.こういう造語は少なくない.
 さてこの「Tearos」だが,「トラキアの河」と書いてある.トラキアってエーゲ海北岸だ.さて今度はテアロス河探し.
 検索しまくって,どうやらヘロドトスに出てくる.アケメネス朝のダレイオス1世が西進するくだり.『歴史』第4巻,89〜91節から引用.

八九 (…)ダレイオスは船橋を渡ってボスポロスを越えると,トラキア地方を進み,テアロス河の水源地に達し,ここで3日間野営した.
九十 近隣の住民の話によれば,このテアロス河の水は他のどの川の水よりも治療の効があるといわれ,ことに人間や馬の疥癬に卓効があるという.その水源は三十八もあり,いずれも同じ岩石から流れ出ているが,冷水のものと温水のものとがある.(…)
九一 ダレイオスはこの河に達して野営したが,この河が気に入り石柱を立て,これに次のような銘を刻ませた.
「テアロス河の水源は,あらゆる河川にまさる最高善美の水を産す.スキュティア討伐の軍を率いてこの源に達したるは,あらゆる人間にまさる最高善美の人,ペルシア国ならびに全大陸に王たる,ヒュスタスペスの一子ダレイオス.」
このような碑銘がここに刻まれたのである.
 (ヘロドトス『歴史』,松平千秋訳;筑摩書房,古典世界文学10)

 なかなか由緒のある河のようだが,訳者による註では

テアロス河については詳らかではないが,いずれにしてもきわめて小さい河であるらしい.
 (同書,p.201)

 うーん.でもとりあえず学名に使う分には不都合ではない.
 というわけで,Callitearaは「美しい+テアロス(ただし女性化)」の方針で.プロなら,こんな当てずっぽうの記事を書けないのだが,それは素人の気楽さである.間違いが判明したら,例によって訂正すればいい.
 そのうちにHP記事にも書き込む予定.