No.2:スコットカメムシ.

 
 9月18日,苫小牧市大沼公園の灯火.


 とにかく,カメムシ科のありふれたカメムシから順に紹介していく.
 こいつも普通の奴.とはいえ,南方に分布していない模様.北海道では,晩秋に普通に家に入ってくる.
 掲示板とか見ると本州ではクサギカメムシがよく話題になっているが,北海道にクサギはいない.カメムシの侵入の話が出てきた時に聞きただすと,特徴から大抵はスコットカメムシだと推測される.
 ネットであれこれ調べていて,北海道の虫駆除会社のサイトに引っかかったりする.「越冬のために大群で飛来してくる秋の虫達、中でもスコットカメムシは最強です」とのこと.
 さしずめ北海道人の一番なじみのカメムシといえそうである.
 なかなかの愛嬌のある顔立ちに見えなくもないのだけど,大挙して訪問されても確かに困る.


 学名が「Menida scotti」で,「scotti」がscottの属格なのはわたしにでも分かる.和名はそこからそのまま取ったものであろう.いい命名法だと思う.「scott」というのはイギリスのカメムシ研究者の名前.ただし本人が自ら自分の名前を付けたものではなく,他の人によるオマージュらしい.
 当人にとっては光栄なことだろうが,もちろん一般人にとっては不快害虫である.
 ちなみに「Menida」の方は調べ切れなかった.学名はラテン語なものなのだが,ギリシャ語の知識がないとどうしようもない.わたしはラテン語なら辞書と文法書と首っ引きで時速2行のペースで読むことができるが,ギリシア語は ヽ(´д`*)ノ .カメムシ科「Pentatomidae」にしても,ペンタってギリシア語の「5」である.確かに5角形である.何か接尾辞が付いてるようだが分からない.一体,ギリシア語まで勉強しないといけないのかな.


 このカメムシは背中の白い模様が特徴的で分かりやすい.わたしには何やら骸骨の肋骨のように見える.
 
 これははじめの画像と同じ時に撮ったもの.ただし別個体である.
 北隆館『原色昆虫大図鑑Ⅲ』では次のように説明される.

銅色光沢のある暗褐色.藍緑色を帯びるものもある.小楯板の基部は広く黒色,先端白色部前方も黒い.

 なるほど,「黒地に白模様」でなくて,「白地に黒」という括りになるらしい.「緑色」というのは全国農村教育協会『日本産原色カメムシ図鑑』の写真がそれにあたると思う.そちらの解説では,

翅の先端は腹部より長く突出している.

とある.これも特徴としてポイント高い.


 また北隆館本に戻って,

山地の闊葉樹(引用者註:かつようじゅ,と読むらしい.広葉樹のこと)上で生活する.(…)本種や前種(引用者註:ナカボシカメムシは晩秋特定の場所に大群が集合し,また家屋に侵入して冬を越すことがある.

 フェロモンを出し合って三々五々集結するのだろう.
 例えば小魚が群れを成すのは,敵に少しだけ食われておいて,その隙に大多数が逃げ延びる戦略だという.
 カメムシの群れはきっと意味合いが違う.だいたい連中はもともとが機敏でないところに持ってきて,寒くてますます動きが悪いはずだ.考えられるとすれば,一斉に臭いを出すことで防御をより効果的にすることだろうか.


 ところで,http://www.agr.okayama-u.ac.jp/LIPM/OB's%20page/OB.htmの「スコットカメムシは肉食者か!?」によれば,幼虫時代に他の昆虫や昆虫卵を捕食して栄養を取らないと成長しない(栄養不良?で死ぬ)そうである.難儀な奴らだ.
 そういえば『カメムシ図鑑』では果実や種子を吸わないと育たない種類の記述もあった.要するに,連中全般,生態や生活史は十分に解明されていないようだ.まあ不快害虫だしねえ.