No.3:エゾアオカメムシ
スイーピング(すくい取り.要するに草木の所で網を振り回して無差別捕獲する)をやらないので,もっぱらのそのそ歩き回って葉っぱや花をのぞき込んで,あるいは灯火に飛来しているの狙ってカメムシ探しをする.効率はよろしくない.
それでも1回の出撃でカメムシを1頭も見つけられなかったことはほとんどない.沢山いる虫なのだろう.
このエゾアオカメムシも常連の定番.葉っぱの上に,いつもの情けなさそうな顔をして貼り付いている.泣きそうというか,とにかくリストラされて明日から仕事がないような顔つきである.どうしてそんな顔に見えるかというと,前回のスコットカメムシと比べれば分かるのだが,スコットは眼が勢いよく突出してクリクリしているのに対して,エゾアオの眼は飛び出していない.陰にこもって見える.
当人たちにしてみれば,周囲の見え具合はどうせ大して変わらないだろうし,見物人にどう思われるか何て,かまってられないよというところだろう.
触角にも脚にも特長がないが,膜質部(後ろ翅の所)がくっきり黒い.胸が力瘤のように脈々と隆起している.
では図鑑記事読み比べ.シーズンオフなのでこういう作業が楽しい.まず全農教『カメムシ図鑑』.
光沢のある濃緑色に,細かい黒い点刻を散りばめる.腹面は黄緑色.前胸背側角がやや強く突出し,先端は丸みを帯びる.腹部の背面は青黒い.
次,北隆館『昆虫大図鑑』.
やや光沢のある濃緑色で黒色点刻を散布する.時に褐色化した個体もある.頭部側葉は中葉の前方で接近し,前胸背の両角は幅広く突出する.
同定用には後者に軍配.側葉・中葉云々は次図参照.こんなのも眼と合わせて,このカメムシの個性を形作っている.
両図鑑とも,「側角」にこだわっているが,それはおそらく学名のangulosa(角張っている,かどがあるの意)に引きずられてのものだろう.
下画像は褐色個体.この記述に気付くまで,エゾアオなのかどうかずっと不安だった.
05年10月15日,同じく苫小牧市錦大沼公園で撮影.
『カメムシ図鑑』から.
山地の草むらで生活するが,北海道や東北では平地にも見られる.広食性でマメ科やキク科植物に寄生し,ダイズやイネなどを吸収加害することもある.
ググると,なるほどダイズ関係でところどころヒットする.クローバーへの害もあるようで,要するにマメ好きと見える.凶悪・大規模なものではないようだが,一応は農業害虫らしい.