No.4:トゲカメムシ

 
 05年8月21日,苫小牧市大沼公園で撮影.


 カメムシ好きの人の理由の1つに「形がしっかりしているから」というのがあるそうである.なるほど,こいつももいい形をしている.カミキリムシもファンが多い(大学の恩師の1人@中世哲学が沢山の標本箱にぎっしり大小のカミキリを詰め込んであるのを見せてもらったことがある)が,個人的にはカメムシのほうが愛嬌があっていい.
 猛者になると「あの香りが好き」なんてことになるそうだが,わたしはその域には達していない.少し離れて写真を撮るだけ.


 今シーズンよく見かけた種類.肩当てがとがっているだけで,あとはごくありふれたカメムシである.「トゲ」というのはこの,前胸背側角(大仰な名称だなー)がとがっていることから.イメージがなんとなく違うけど,まあ「トゲ」なのかな.
 学名のCarbula humerigeraの「humerigera」は,「上腕骨を持っている」の意(だと思う.わたしのラテン語は相当あやしい).こっちはもっと変.「上腕骨」ってこんなだよ(http://www.humanbody.jp/human/item/sqs19s2.html).うーん.そうなのかなあー.ファーブル先生は『昆虫記』の中で,学名のいい加減さにずいぶんお怒りであるが,むべなるかなである.


 では図鑑読み比べ.まず北隆館『原色昆虫大図鑑』.

銅色光沢を帯びた暗褐色で,前胸背側縁と小楯板後縁は細く白色.頭部中葉は側葉と同長.触角第4・5節の先半は黒色である.前胸背側角は棘状に鋭く突出する.寒地産のものでは体が小型となり,前胸側突起は細く尖る.中胸板中央に縦隆起線がある.

 図鑑の記述と写真を見比べて,特徴を対応させていく作業は楽しい.「大きさ」をとるか,「トゲの鋭さ」をとるか思案のしどころ.やっぱり大きい方が得のような気がする.「縦隆起線」はよく分からない.
 次は『原色カメムシ図鑑』.

銅色光沢を帯びた暗褐色で,前胸背前側縁と小楯板の先端は白色.前胸背側角は棘状にするどく突き出している.

 苦労している.でもこの図鑑の記述の美質は農学的なことに触れている点.

好んでイネに集まることはないが,ときに穂を吸収して斑点米を産出する.

 なるほどー.


 トゲカメムシは新刊の学研『幼虫図鑑』にも出てきている.この図鑑の面白いのは「越冬」.

幼虫で越冬するが,齢期は2〜4齢とまちまちで,ふ化時期に関係するようである.

 アバウトである.決まった時期に産卵すればそれで済むことだと思う.ズラすことで適応上の利点があるのかもしれない.


 ところで次の画像.わたしにしてはきれいに撮れたものなんだが,カメムシに「お弁当」がついている.秋口に見つけたものにはたいていついていた.
 
 05年9月17日,苫小牧市緑ヶ丘公園.


 「お弁当つけて」などいう牧歌的なものではなく,もちろん寄生バエの卵である.
 本とか調べると,この類のハエはカメムシにモーションを五月蝿くかけて,カメが嫌がって翅を開いた瞬間に腹と翅の隙間へ産卵する,とある.でもこれはどう見ても堂々と上から産み付けられている.手抜き,それともそういう種類なのか? 幼虫はふ化後,カメムシの上を這い回って,もぐり込めるところ(気門がベストだと思うのだが,どこかをかじって侵入するのかもしれない)を探して冒険することになるだろう.
 さらに言えば,1頭のカメムシで2つも3つもこなせるとは思えない.おそらく卵の親はこいつ.結構大きめのハエなのである.
 
 05年8月5日,苫小牧市緑ヶ丘公園.(これは8月6日の日記から再掲)
 こいつは実によくいるし,目立つ.
 2㌢ないカメムシでこんなのの幼虫を複数やしなえるとはわたしには思えないのである.最初の1頭が潜入すると,残りはふ化しても死んでしまうのだろうか.そういうケースが他の虫であったような記憶があるが,資料が見つからない.
 しかしこんなにむき出しで,しかもあんなに目立つ(数が多い)し,ふ化まで何となく時間がかかりそうだし,ということは,この寄生バエの卵を狙うヤドリコバチがいてもよさそうである.


 それにしてもさー,カメムシ側もなんとか工夫して卵をこすり落とせよ.
 ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマー! に吸ってもらうなんてのも有力だと思うのだが.