No.5:アシアカカメムシ

 (どうにも憂鬱なので,更新.虫に逃避)


 わたしの虫撮りのポイントはあまり多くない.3,4箇所ほど.シーズン途中,公園の近くでクマ目撃があって,ますますフィールドが狭められてしまった.
 そのかわりと言っては,頻度は高かった.
 昼間は仕事,休日もあまり保証されていないので,もっぱら平日夜に出撃.夏頃は,雨の日とネット碁で拘束されている時以外は,ほとんど毎晩虫撮りに行っていた.


 夜なので灯火を狙う.灯火が誘引するのは虫だけではないのである.
 不審者とみられてどやされたり咎められたりしたことも何回か.でも,面白い.やめられない. 初めて見るカメムシに心躍ったり,ぞっとするほど美しい蛾に息を飲まされる感動は,先入観なしに足を止めて見入った者にしかきっと分からない.


 このカメムシを撮ったのも,道路際のライトアップされた看板でである.もちろん夜.
 撮影している姿が道路から丸見え.看板に向かって至近距離でカメラのフラッシュを光らせなどして,あからさまに怪しいに違いない.それでも,何かを盗撮できるような場所でもないので,怪しいだけですむようだ.(でも最近は幼女を拉致して薮に引き込んで異常な写真を撮る趣味の御仁もいるらしい.ますますこちらはやりにくくなるばかりだ.平和的でほとんど他人に迷惑をかけない,いい趣味なのですがねえ)


 とにかくも,世の中の大抵の人は「趣味の虫写真」というジャンルの存在を全く知らないので困るのである.「人気ブログランキング」でも「写真−虫」のカテゴリーがないのは他所で書いたとおり.個人的には「猫写真」よりもずっと面白いはず.「鳥」は好きだからOK.(わがまま).


  
 05年9月16日,苫小牧市樽前,錦大沼入口.

 アシアカカメムシは,わたしにとっては定番とはいえない.昨シーズンは1度限りの1個体のみ.
 まだ駆け出しなので,そういう種類の方が多かったりする.来年にまた出会えるかどうか(もちろん別個体ではあるけれど).ついでに言えば使える画像もこれ1枚だけだった.あとは手ぶれピンぼけ.この写真も相当に甘い.来年にはもっと技術を向上させる予定.


 一見して,黒々してがっちりした,大きさも頃合いな良さげなカメムシ.帰宅後,PCに落とした画像を拡大してきらきらした細部に見入る.これが至福の時間(オリジナルのサイズ3000×2000で見せられないのが本当に残念).同定はその時に.
 学名は,Pentatoma rufipes.rufi-pesとは,「赤−足」だから直訳すればアカアシカメムシなのだろうが,なぜか和名はアシアカカメムシである.わたしの頭の中では,もちろんゴチャゴチャになっている.
 『カメムシ図鑑』(当時はこの本しか持ってなかったので,これで同定した).

銅色光沢を持った暗褐色で,小楯板(上羽根のところの逆▽の部分)の先端は黄白色ないし赤褐色,腹部の結合板(両サイドの羽根からはみ出した横腹のところ)には黒い横帯がある.前胸背側角(肩のところ)は幅が広く突出し,先端が後側方に向かってとがり,独特な形状をしている

 これはわかりやすさ満点.確かにニッパーでぶった切ったプラモ部品の枠の端切れのような,いい加減な側角をしている.これならわたしでも悩まない.強力コテ様@ふたばのお墨付きももらった.
 「足が赤い」は話題に出てこない.そもそも,あんまり足は目立ってない.見れば赤いのだが,それほど珍しい属性ではないような気も.
 次は北隆館『昆虫大図鑑』から.

暗褐色で銅色光沢があり,小楯板先端は赤渇,腹部結合板には黒色の横縞がある.頭部側葉は中葉の前方で合し,前胸背の側角は幅広く突出し先端は後側方に向かって尖る.中胸板正中線は隆起し,(後は裏返さないと分からないネタなので略)

 北隆館の方が先行テクストなので,『カメムシ図鑑』の苦労が分かる.(更に元ネタの論文があるのかな).
 生態については,再び『カメムシ図鑑』で.

山地のハルニレ,ミズナラ,カツラ,カンバ類,カエデ類などの植物で生活する.しばしば灯火に飛来する.

 やっぱり,わたしの住んでいる所は山地なんだなあ.虫好きとしては喜ばないと駄目かー.


 強力コテ様@ふたばによると,このカメムシは成虫では越冬できないらしい.ということは,カメムシは蛹がないから,幼虫越冬ということだな.どんな幼虫なんだろう.見てみたいなー.