No.6:チャバネアオカメムシ.

 今回は内地のカメムシ.年配の北海道人は本州以西をいまだに「内地」と呼ぶのである.こっちは所詮「外地」である.
 どうやらこいつは,図鑑上では北海道には分布していないことになっている.とはいえ,このところとりわけ蝶や蛾の北上が著しいから,カメムシだって分からない.青森にはいるのだから,道南・道央なら楽勝だと思う.とはいえ,まだわたしは見てはいない.
 内地では,まるきりの普通種とのこと.


 
 11月9日,長崎市.(11/14から再掲)


 街中の道路っ端の空き地の雑草の上で発見(*゚Д゚).九州とはいえ寒いのか,葉っぱの上でちょこんと固まっていた.
 雑踏の中,カメラを取り出して撮影に及ぶ.なんだかなあ.ピントがもやっているのはそのせいにしておく.
 上翅(「半翅鞘」というらしい)が茶色いの特徴.甘栗の渋皮のような色.学名のPlautia crossotaは「市松(模様)のプロウティア」ということらしい.
 そんなにきれいな市松模様ではないが,学名なんてそんなものである.プロウティアというのは,どう調べてもローマの女名前である.何か由来があるのかもしれないが分からない.
 顔つきはエゾアオと同じで眼が涙目.頭の突き出しが心持ち浅くて,肩のラインに連続して△形である.そのためか,体型がエゾアオと比べて少し丸っこく感じる.
 『カメムシ図鑑』では,

光沢のある緑色で,前翅は紫がかった茶色である.まれに赤色がかった個体がある.ヒメチャバネアオカメムシに似ているが,大型で,前胸背側縁の稜が黒い.

 次は北隆館.

光沢ある緑色であるが,秋季には褐色を帯びたものも現れる.半翅鞘は褐色ないし暗褐色.頭部中葉は側葉と等長.後胸板中央は菱形に隆起し(…)

 さすがに詳しい.秋冬の色変化の記述はぜひとも欲しいところである.『カメムシ図鑑』では,そこら辺が分からない.冬色の写真もない.
 知らない人間には分からんぞー o(`ω´*)o.


 
 05年11月12日,奈良市.(11/25から再掲)
 これが同じチャバネアオカメムシなのかが,実はずっと判断しかねていたのである.顔つきが同じだとは思っていた(わたしはカメムシを顔で判断する傾向がある)のだが自信がなかった.結局,ふたばに貼って,親切なコテの方々のご教示で判明.
 要するに寒さに当たると,色素が変化してこういう色になるものらしい.ケチケチせずに図鑑には書きなさい.


 ところでこのカメムシ,害虫真っ只中である.
 好著『果樹カメムシ』(堤隆文,農文協)(この本については,その内に取り上げる予定)で,チャバネアオは果樹荒らしの三羽烏の1頭にあげられている(他は,クサギとツヤアオ).
 それによると,果樹を食害するのは単に彼らがより好む食物のシーズンが終わったからで,果物自体は大した栄養分にはならない代理食なのだという.
 最近の果物はずいぶん糖度も上がってきて,糖尿のわたしにはかえって迷惑なほどなのだが,いずれにせよ連中は砂糖水では主食にならないらしい.贅沢である.生意気である.じゃあ主食は何かというと,

こうした餌へのこだわりや気まぐれは,(…),彼らが木の実の種子を本来の餌とする「種子カメムシ」ということにあります.
(…)
とくに,成熟したヒノキやスギの球果にある種子は彼らにとって主食ともいえる餌です.これらには幼虫の発育のみならず,成虫の雌の卵巣成熟に不可欠な脂肪などの栄養分が多く含まれているからです.

 スコットカメムシが肉食を必要とするらしいことは以前取り上げたが,こんどは脂肪分である.どうもカメムシは成長にかなりコストがかかる虫である.研究者にとっては魅力的なことだろう.
 セミもひょっとしたら幼虫の頃は,地中で,ミミズや根っ切り虫をとっ捕まえて吸ったりしているのでは,なんて妄想が広がったりする.
 研究室では生ピーナツで飼育するとのこと.連中の口針は固い種子に突き刺すために,先端が鋸目,中ほどがヤスリになっていて,しかも消化液を出して溶かして吸収するという.
 なるほどなあ.サシガメなども消化液を出しながら獲物を吸っているのかもしれない.蜘蛛もそうだし.その方が資源の有効利用にかなっている.