No.9:ハネナガマキバサシガメ

 9月の話. 
「『カメムシ図鑑』でよく出てくる撮影地に,苫小牧市高丘という住所を見かける」と,いつもの虫系掲示板で聞いた.
 市内地図を調べて見ると,なるほど「高丘公園」というのがある.
 知らなかった.まだこの地に転勤してきて3年しか経ってないし.北大演習林が近くにあるから,きっとその関係だろう.


 地図では単に山の中である.どこから入れるものかも分からない.とにかく車で行ってみる.


 道道(みちみち,ではない.どーどー.絶滅鳥みたいだ)を曲がると,そこは霊園だった.
 ん? 引き返して,もう一度地図を確認しても,ここしかない.仕方ない.突入.
 ドライブスルーで墓石の横を通過していく.墓地の最奥部とおぼしき箇所に看板が.向こうをのぞき込むと脇道があって林道に続いている.
 ここかー.大変な所だなあ.死んだ人の魂が蝶になるという話はあるが,カメムシになるというのは聞いたことがない.
 ありゃりゃ.ダメポだ.「熊出現で立ち入り禁止」.惜しい命ではないと日々高言しているものの,(σ`(Å)´)σヒグマーに襲われて,ローカルニュースでお茶の間に明るい話題を提供するつもりはない.まして,撮ったカメムシをPCで拡大して見るまでは死にきれない.
 仕方ないので,林道の入り口近くを探査.その時見つけたのが,このカメムシ.カラ手では帰らないぞー.


 
 05年9月4日,苫小牧市高丘公園.
 種名は,帰って図鑑を調べてハネナガマキバサシガメだろうと見当がついた.「ふ○ば」でコテの方のお墨付きももらった.本家のサシガメをまだ撮っていないのに,マキバサシばかり詳しくなっていく自分がいる.
 「軽い・薄い・弱そう」の三重苦の虫に見える.チャイロクチブトカメムシのような破壊力は感じられない.でも学名はNabis stenoferus.stenoは「狭い」で,ferusは「猛獣・野獣」である.こう見えても獰猛に違いない.本当かいな.
 ネットを探し回ると,http://www.ruralnet.or.jp/taikei/tenteki.html(高いけどこの本( ゚д゚)ホスィ…*1.コナガ(はじめ,鳥のエナガを連想してしまった.粉蛾だった.それとも小菜蛾かな)やヨコバイの天敵だという.
 何となく情景が目に浮かぶなー.とりあえず食えているようで一安心.


 
 
 05年9月6日,苫小牧市大沼公園
 いつもの灯火にも来ていた.上りたいのだが上れない模様.やっぱり弱い.
 さてさて,図鑑を取り出して.(そういえば幼稚園の頃,そこの本棚の図鑑に夢中で家に帰りたがらず先生を困らせた記憶が.栴檀はふた○ちゃんねるよりなんだか)
 まず北隆館『大図鑑』.

帯褐暗灰色(うーん,イメージできない)または淡黄褐色で微毛におおわれる.前胸背後葉は広く,襟状部とともに弱い小点刻がある.半翅鞘は常に長く,膜質部の縦脈は多い.(…)雑草間にすむ普通種.

 「微毛」というのは,別の画像を拡大すると,腹のあたりが毛羽だっているのでそのことだろう.実物は写真で見るよりも,ずっと「ハネナガ」に見える.
 『カメムシ図鑑』.

体は淡灰褐色で,正中線上に暗色の条があるが,不明瞭なときもある.前翅が長く,腹端をはるかに超える.(…)
草むらや畑作物の上で小さい昆虫を捕食する.夜間灯火に飛来する.
(強調引用者)

 こういうところがさすがに「農村教育」の本.
 もっと広く認知されていい虫だと思うのだが.でも弱そうだからなー.人気は出ないだろうな.

*1:結局セブンで注文しちゃいました.いざとなったら病院代を抑制すればいいや.