No.11:キバラヘリカメムシ

 
 05年10月9日,苫小牧市大沼公園
 カメムシには美しいのもいれば,いかにも愛嬌のあるのもいるのだが,キバラヘリカメムシは端的にお洒落で格好いい.
 均整の取れたスタイル.翅のざらざらしたつや消しの黒(実際は画像よりも黒く見える)もなかなかいいし,結合板(腹のはみ出した所)の黄色も目立つし,何より脚の白のポイントが効果的である.


 ちょっとネットで検索をかけてみる.出てくる出てくる.マキバサシとはずいぶん扱いが違う.認知度が高い.
 絵まであった.「むしのしゃしんしゅう」さんのところの「イメージ画」.カメムシ系の萌絵(?)は初めて見ました(だいたいが虫好きはリアル虫で十分に萌えられることが多い).ハイソックスです.
 わたしには海賊盛んなりし頃の「粋な悪党紳士」みたいなイメージ.


 実際,成虫を見たときには,「キバラ」(黄腹)よりも,脚の白が印象的である.学名"Plinachtus bicoloripes".この属小名なら辞書見なくても分かる,「2つ+色+足」だ.命名者が成虫を見て学名をつけたことが分かる.
 ついでだから科名も見ておこう.ヘリカメムシ科"Coreidae".辞書〜.「ギリシャ語ナンキンムシから」.え,本家のナンキンムシ(トコジラミ)は? "Cimicidae"「ラテン語ナンキンムシ・シラミ」.
 Σ(゚д゚)オイオイという感じである.そもそもさー,ヘリカメは南京虫じゃないよ.

 もう一枚画像を貼って,図鑑と対照.1枚目とデータは同じ.
 
 それでは,北隆館『大図鑑』から.うわー,詳しい.

背面は黒褐色,結合板は黄と黒の縞,腹面は黄色または黄緑色(←見たい〜)で黒紋をもち,脚は黒褐であるが腿節中央部は幅広く黄色である.触角第2・3節は円筒形であるが第3節の先端部はわずかに扁平.前胸背側縁には細く側板の黄色部が見え,側角はやや扁平になって直角をなして突出する.マユミ・ニシキギなどの樹上にすむ.

 そんなに詳しく説明しなくても同定に困るカメムシではないのだけど,見るポイントがよく分かる.
 『カメムシ図鑑』.

背面は黒褐色で,腹面は黄褐色.脚は黒褐色で,各腿節の基部2/3が黄褐色.前胸背にするどい棘がある個体と,棘のない個体がある.
ニシキギ,マユミ,ツルウメモドキなどの植物の実を好み,他の植物で発見されることは少ない.

 すっかり褐色のカメムシになってしまったけど仕方ないか.


 「実を好み」かー.なるほど.
 ネットで画像発見.「珍獣の館」さんのところの「ニシキギの実にしがみつく」.
 このカメムシも,チャバネアオカメムシの項で触れたように,種子の栄養が成長や性成熟に必要なのかもしれない.
 ここで,学研『幼虫図鑑』.本はいろいろ持ってます.

マユミなどの実がつく10〜11月に4・5齢幼虫が多数見られる.

 はっきりとは言い切れない模様.あまり実用性がないから,研究は進まないだろうな.


 ※画像をリンクさせてもらったサイトにはトラックバックみたいな感じで感謝の意を表したいのだけど,うっかり妙なものに登録したばっかりに,「宣伝」と思われるのが嫌で黙っていることに.リンクフリーにしてくれているし,いいかあ.