No.13:シロヘリナガカメムシ

 この連載もなんとかナガカメムシ科へ.シロヘリナガカメムシである.
 掲示板で話題になると「ハロホロヒレハレみたいだ」と古典的なツッコミが入るのが定番の虫.


 
 05年8月28日.苫小牧市大沼公園.いつもの雑木林とは違って道ばたの雑草の上.
 同定そのものは「ふ○ば」の強力コテの人のお世話になったのだが,自分で図鑑を改めて調べていくと結構やっかいな種類だ.


 ※わたしはカメムシ学の事情動向に通じていないので,かなりの憶測が以下の記述に含まれていることをお赦し願いたい.また,誤りについてはご指摘・訂正頂ければありがたく思う.


 『カメムシ図鑑』を見てまず図版に困った.真っ黒なカメムシである.ネットで検索しても,黒助画像ばかりである.わたしの撮ったものはもっと茶が強い.翅の模様はだいたい同じだから,色変化? でも記述はない.

195. シロヘリナガカメムシ(=ウスグロシロヘリナガカメムシ
Panaorus japonicus(Stal)
前翅は黄褐色で,黒色点刻を密布する.革質部の先端近くに明瞭な黄白色の紋がない.Panaorus属は前胸背の側隆起が幅広く,側縁は円弧状になる.
草むらの地表で生活する.

 うーん.「(=)」も分からない.名称変更なのかな.「黄褐色」は満足.


 北隆館『大図鑑』を見て,少し状況が見えてきた.

 Rhyparochromus属は世界に広く分布するもので種類も相当判明している.日本には6種いるがここでは3種を明記する.(…)
−前胸背側縁に点刻がある.革質部の先端近くには斑紋なく点刻を密に分布する.……2
2.爪状部(小楯板を囲んでいる部分)の基部には黒紋なし.革質部は内角にうすい黒色の帯がある.触角は黒色.(…)分布:日本(本州・四国・九州).(…)……シロヘリナガカメムシ R. japonicus Stal
−爪状部の基部には斑紋あり.革質部の内角には明瞭な黒帯がある.触角の第1節前半,2節基部半分および第4節の基部近くの斑紋は赤黄色.(…)分布:日本(北海道・本州).……ウスグロシロヘリナガカメムシ R. angustatus Montandon

 学名が変わっている.
 記載属名が違うということは『カメムシ図鑑』の方が新しいから,P.に最近変更になったということである.属名が変わったということは分類に動きがあったということ.
 おそらく「ウスグロシロヘリナガカメムシ」と「シロヘリナガカメムシ」とが統合されて「シロヘリナガ」に一本化されたのだと思われる.
 『カメムシ図鑑』の抑制された解説や,属の特徴にわざわざ触れたこともその方向から理解できる.


 触角については確認できないが,写真の個体は「旧ウスグロシロヘリナガカメムシ」である可能性が高い.北海道だし,爪状部に黒紋が見えるし.


 模様確認用画像投下.
 
 1枚目と同じデータだが違う個体.右の中脚がとれている.
 1枚目の奴よりも黒紋があまりはっきりしていない.全体の色は同じ感じ.


 今となっては2つの後悔が.
 1つは触角を十分に観察しなかったこと.
 もう1つは,止まっていた植物の根元付近を探索しなかったこと.地表が主戦場のカメムシだというのに惜しいことをした.当時は知識がなかったのである.
 次の夏が楽しみ.もっと地面にも眼を向けていく予定である.