No.18 : トビマダラカスミカメ


 05年9月1日,苫小牧市大沼公園


 赤茶色に塗られた看板の台座の所.見事な保護色である.とはいえ自然環境ではこれほどピタリとはいくまい.
 全農教『カメムシ図鑑第2巻』では,この属について次のように記述されている.

各種は一般に木の枝や幹で生活している.そのため,くすんだ色彩は生活場所と調和した保護色になっている. (…) また,昼間はあまり採集されることのない反面,夜間多数個体が燈火に飛来することがあるので,もっぱら夜行性のようである.昼間は落ち葉の下などに隠れている種もあるという.(p.225)

 触角の長さだけでも,なんとなく光のない場所での活動を予想させる.この赤っぽい色は落ち葉の上で威力を発揮すると思われるがどうだろう.


 トビマダラカスミカメの学名は,"Phytocoris nowickyi".小種名の「ノヴィツキー」はおそらく人名.属名は「植物の+ナンキンムシ」である.それはまあその通りとしか言いようがない.
 再び『カメムシ図鑑第2巻』から,このカメムシについて引用.

本種は北日本では平地から山地まで普通に生息し,ヨモギなどの多年生草木類のほか,ヤナギなどから採取されるが,西日本では山地性となり,個体数も少ない.成虫は8月頃に発生する.(p.256)

 たまに北方系の虫が出てくるとなんだか嬉しい.日頃は,分布の関係でいつも悔しい思いをしているのである.南の方が絶対に虫の種類が多いぞ.