走れタクシー,苫小牧を行く.

 朝6時発で札幌へ。道徳教育が云々の研究会。
 子供たちはまあまあよくやっている方だと思う。どう考えても大人たちの方がろくでない。


 朝の苫小牧は雨、札幌は曇り、夜の苫小牧は雨。1日中降っていたに違いない.今年の苫小牧の天気はいかれていて、ドクガがまだ出てこない。かえって不安である。


 帰り.駅前で都市間バスを降りてタクシーに乗る。苫小牧駅−札幌駅が1500円ほどなのに対して、苫小牧駅−自宅は3000円かかる。
 乗り込んで運転手さん(30才ほど?)に「××大学の手前です」と申告すると「○○(住所)のですか?」とうわずった声で聞き返してきた。他の選択肢はない.まさか××大の「本校」に行きたいとでも思ったのだろうか。苫小牧から東京までタクシーで行く元気はわたしにはない。運転手だってさすがに嫌に違いない。
 わたしの警戒心のアンテナが立ったのは言うまでもない。
 運転手さんは、車内で喫煙していたらしく手で煙を散らしたり、がさがさと音をさせたかと思うと缶コーヒーを勧めたりする。煙は平気だし、コーヒーはいらない。
 このタクシー、とにかく発進時のアクセルの踏み込み方が強烈である。あっという間に加速して時速70キロに達してしまう。暗くて細い道。前方車両との車間という概念はもはやどこにも存在していない。急ブレーキで100%追突するだろう。もとより惜しい命ではない。わたしの命なんて路上を疾駆するクマケムシよりもずっと軽いと心得ている。
 しかもこの運転手さんは、運転中にしばしばうめくような大きなため息をつき、前方がつまるといらだたしげに指でハンドルをリズミカルに叩き、追い越しのチャンスは絶対に逃さない。交差点は曲がった者勝ちに近い。後ろから見て、肩には異常な力が入っている。面白い面白い。もちろん後部座席シートベルトは受け口の方が外されていて締められない仕様である。
 異常に急いでいるのか、あるいは単に運転とはかくあるべしと心得ているのか、あるいは薬物を使用中なのかは分からない。いずれにせよこういう不安に満ちたタクシーは初めてだった。
 結局、何事もなく到着してしまった。残念だったような安心したような。縁があれば、わたしはこの運転手さんの運転するタクシーに再び乗るだろう。