8月2日夜の部前半.ウスムラサキヨトウ.ナカムラサキフトメイガ.マルモンシロガ.カクモンキシタバ.セアカヨトウ.モンスカシキノメイガ.

 3日夜はやっぱり大雨.というわけで2日の夜の部は前後半に分けて貼ります.


 20時半.表に出てみると雨粒は落ちてきていない.ガスと霧雨の間くらい.これなら蛾は出てくるだろう.出撃.

大沼公園駐車場.

 先客がいた.甲虫採りの親子連れである.親は「♀の小さいのは逃がして」とか言っている.珍しくまともな人である.子供は長靴をはいて乱暴にガツガツ歩いている.これは無駄に蛾やスジコガネを踏んでいるな.差別意識は子供の方が顕著なのである.子供には踏みつけられる側に対する想像力がない.
 「何を撮っているのですか」「蛾です」「研究か何かですか」「いやそれほどのことでは」.
 蛾を楽しみで撮る,という発想は彼らには存在しないのだろう.例の甲虫を採っている人に対しては,誰も「研究ですか」とは聞かないに違いないのに.


 ●カシワマイマイ♂が非常に多い.大発生とまでは思わないが,「カシワマイマイだらけ」とは言える程度.画像は明日の更新で.
 ●ノンネマイマイ♂(20).シーズン初物.
 ●ナカジロキシタヨトウ(×)*5頭以上.

 蛾に水滴が浮いている.

 ウスムラサキヨトウ.15mm.

 この角度だとなんだかキンウワバっぽいがヨトウガ亜科である.
 学名は Eucarta virgo .属名は「極めて良い」.種小名は「処女の」.「乙女の」と訳した方がいいか.乙女に見えるかどうかは当方は関知しない.

 ナカムラサキフトメイガ.12mm.

 洒落たデザインの蛾.翅を広げると見事な弧を描く.
 学名は Lista ficki .属名は,レキシコンを引くと「listos:祈りによって心が動かされること」にぶつかる.これがラテン語化したものなのだろうか.意味が分からなすぎるぞ.違うような気がする.
 種小名はきっと人名.「フィックの」だろう.

 トイレの壁にマルモンシロガ.18mm.

 この夜,温泉看板にもう1頭.
 学名は Sphragifera sigillata .属名はギリシア語由来で「印章を持つもの」.ハンコを押されている,ということだろう.よさそうな命名だと思う.
 種小名も「捺印された」.こっちはラテン語から.同じ事をギリシア語とラテン語で言い分けただけである.

 初見.大きい.模様にメリハリがある.良い蛾である.

 カクモンキシタバ.前翅長25mm.
 シタバの名に恥じず,下翅に黄色の帯があるそうだが見せてくれなかった.
 学名は Chrysorithrum amatum .属名は調べきれず.「黄金の××」.種小名は「愛された」.
 ※「rithrum」について,ホメロスの『オデュッセイア』の第1章に「Reithronの港」を見つけた.ラテン語化にするにあたって「ei→i」,「on→um」に変化するので平仄は合っている.「金色のレイトロン」? やっぱり命名の意図は分からない.1度出てくる切りのただの港である.
 ※断蟲亭さんからコメント! いつもありがとうございます.m( _ _ )m

「erythrum」が「erithrum」と書かれて、chriso+erithrumで片方の母音が省略されたのではないでしょうか。つまり「金赤」という意味です.

 辞典引き直し.なるほどそうである.うーーん.駄目だなあ自分.
 「chrythros」はラテン語では「ruber」にあたるらしい.羅でも希でも「赤面」などの意味が出てくる.あまりくどくない赤かと思えば,「深紅色」の意味も示されているのでニュアンスをつかむのは難しそうだ.

 初見が続く.今度は小さい.

 セアカヨトウ.11mm.
 学名は Oligia fodinae .属名は「小さい」から.「オリゴ糖」と同じ語源である.種小名は「坑道の」.背中の模様がトンネルの入り口にでも見えたのだろうか.

 おそらくモンスカシキノメイガ.14mm.

 学名は Pseudebulea fentoni .属名は「偽ebulea」.「エブレア」とはノメイガの属の一つで,日本にはいないようだ.検索をかけると「UK Moths」の「Ebulea crocealis」がヒットする.フツーのノメイガに見える.
 種小名は人名.「フェントンの」.


 ユウウツなんで古典語に逃避.重い辞典をめくっていると時間が夢のように過ぎていく.
 続きは明日更新の方向で.