出張仕事.

 あーーっと思ったら車検の期限である.おかげで今日の出張は電車で行くことに.しかも週末は自宅界隈でしか虫撮りができないことまで確定した.


 もともとは,今日は休暇を取って札幌の某環境系専門学校で「北海道のトンボについて」のレクチャーを受ける予定だったのである.
 ところが出張命令が入った.某上部組織からの指令なので拒否できない.泣く泣く休暇取り下げ….


 というわけで夏の日に電車で移動.
 駅のホームの跨線橋の窓にノメイガが多い.これは帰宅後「みんな蛾」を見て「ヘリキスジノメイガ」と判明する.通路には黒い中型のカミキリ.
 カメラがないのが残念だが,わたしは仕事に逝くのである.


 じきに電車が来る.車中は40分強.
 大声で喋り散らす不作法者がいなかったのは何より.暑かったからかもしれない.若い連中は網棚を使う教育を受けていないので,荷物を平気で座席に置いている.
 眠気に襲われるが,眠ってしまうと雪山のように死ぬかもしれない.死ぬ前に着いた.


 案内板を見ると,会場まで2kmちょっと.これは歩く.
 昼食を取る時間の余裕もある.食事をしよう.町村へ行った時にわたしが最も困るのは,喫茶店がさっぱり存在しないこと.彼らはコーヒーを飲んだりしないらしい.洋書店がないのも恥ずかしいことだが,喫茶店がないのも民度の低さ以外の何ものでもない.
 仕方なくファストフード店ぽい店へ.そういう性質の店ならある.当店自慢の何だか定食はやっぱり美味しくない.払ったお金は冷房賃だと思えばプラス思考である.
 (わたしは,「自分が料理したもの」と「酒」以外はたいてい美味しくない.しかも料理好きではないので,必然的に酒浸りになる).


 道端の雑草の植生が札幌のものとは違う.苫小牧と同じ.当然なのだが.
 飛び出すのはヘリキスジノメイガ.亜外縁線と中室あたりの紋が白く,目立つ.旬かと思う.交尾しているヒラタシデムシ.あの大きな蝶はおそらくナミアゲハ.どう見てもオオモンシロチョウ.
 北海道の夏は気温が上がっても(30℃近く行っているはず),風さえあれば体感温度は高くない.快適である.


 仕事.わたしが絡んだたいていの研修会は,非官僚的な言説が飛びかい,形式的な結論から確実に遠ざかっていって結局訳が分からなくなるというドロドロしたものになる.そういう人柄らしい.どうしてわたしを講師の一人に呼んだりするのだろう.去年もそうだったのだが.
 でも,どんな研修でも時間がくれば時間切れになるのである.


 帰途.同じ店でアイスコーヒーとチーズバーガーを頼み,冷房代を払う.あんなふにゃらかしたものをわたしはパンとは認めないだろう.コーヒーの氷は美味しかった.
 駅は結構大きい.かつてはそこそこの人口をかかえていたと見える.キオスクは閉鎖されて久しいようだ.一応,有人駅だがそれも18時25分までである.ここの窓にもヘリキスジノメイガ.


 電車に派手な赤っぽい(アカっぽい,ではない)浴衣の女性が乗ってくる.斜めに座っていきなり足を組む.体の軸がゆがんでいるらしい.
 その隣の工員服のおじさんは「シンデレラ殺人劇場」なる本を読んでいる.カバーをすべきだと思う.


 苫着.カシワマイマイの♀のように遠目には見えるのだが他人の庭に踏み込む訳にはいかない.
 苫小牧でもヘリキスジノメイガ沢山.自宅の壁に7頭まで数えた.すぐ逃げる.


 明日はカメラを持って日中活動の予定.さすがに近所で夜にカメラを持って何やらとはいかないのである.