ミドリハガタヨトウ.オオバコヤガ.
20時.気温は8.5℃.寒い.端的に寒い.うんざりである.
錦大沼公園駐車場,収穫なし.
アルテン馬場駐車場.
蛾などいるはずがないものと始めからひねくれていたが,落ち蛾がいた.
ミドリハガタヨトウ.前翅長25mm.
擦れていない新鮮な個体が見たいものである.
久しぶりに図鑑の読み比べをしてみよう.「蛾へのまなざし」分析と大上段に振りかぶることもできるが,単に差異を面白がっているだけである.
まず,保育社『原色日本蛾類図鑑』(昭33初版).
♂の触角はわずかながら鋸歯状.下唇鬚第3節はあまり長くはない.前翅前縁はゆるい弧状で,外縁は波状を呈し,とくに後縁の部分では著しい.翅底の剣状紋から後縁に平行に外縁に達する暗色部があり,この下縁の中室端などには灰緑色のところがところどころみられる.
(p.102)
触角,下唇鬚,翅形,模様.盛りだくさんである.言葉で具体的なものを説明するときのもどかしさがあふれている.現物を示せばそれで済むことを言葉で描写しようとする欲望.
北隆館『原色昆虫大図鑑』(昭40初版)では,やや異なる観点を示す.
♂の触角は単純.前翅は次種(ハイイロハガタヨトウ.引用者註)より細長く,斑紋はこの属の典型的で,大きな環・腎状紋を持ち後者はほぼ四角形.翅脉(脈.引用者註)・後縁に沿い緑色鱗片を散布する.
(p.120)
触角について保育社本の描写を修正したと思われるが,「単純」と言われてもどういう具合になっているのか分からない.腎状紋・環状紋に着目するが,それは属の一般的特徴でしかない.緑部分の部位についてはアバウトであるが,実際的であるともいえる.前翅形について記述しているのは種小名「extensa(引き延ばされた)」を意識したものだろう.
講談社『日本産蛾類大図鑑』(昭57).簡潔である.
♂の触角の軸は太く,鞭状.前翅翅頂はとがり,灰緑色.
(p.737)
なんだかあっけないのだが,触角の形状についてはこれが決定版だろう.同定困難な蛾ではないので,この程度で充分と言われればその通りである.保育社本に見られた語り尽くそうとする熱はここにはない.