ナミシャク(1),アオナミシャク読み比べ.

 気分はシーズンオフ.


 HPを書けという心の声もあるが,目先のブログ.


 アオナミシャク

 06年07月01日.珍しく日中の撮り.測定漏れ.
 もう1頭,正面から.

 08年06月30日.前翅長14mm.


 この蛾はあらかじめ知らなければ,絶対に「アオシャク」から探し始めて迷宮に入るに違いない.アオシャクの新鮮なものとほとんど同じ色だ.
 小型のアオシャクが白っぽく色あせてしまうのに対して,アオナミシャクはわたしの見た範囲ではいつも鮮やかな青である.


 学名は Leptostegna tenerata .属名は「leptos 小さな・狭い」+「stegnos 家」.うーん,何だろう.翅脈? 種小名は「tener 柔らかい」から.


 図鑑の読み比べもやってみよう.ここらが文系である.強調引用者.
 保育社『蛾類図鑑』,初版昭和32年.

触角♂では鋸歯状で微毛を持ち,♀では絲状.前翅には1個の小室を持ち,後翅に翅刺を欠く.翅は弱々しく,半透明.白色横線は波状をなし,前翅の横脈上に白紋がある.(p.200)

 北隆館『昆虫大図鑑』,初版昭和40年.

♂触角は鋸歯状で微毛状,♀は絲状に近い.後翅には♂♀とも翅刺がない.青緑の地に白紋をもち,個体変化はあまり見られない.(p.189)

 講談社『蛾類大図鑑』,初版1982年.

触角♂は鋸歯状で微毛状,♀は単純でいっそう短い毛がはえている.前翅には3本の白線と小さな横脈点があり,後翅の前半は白い.(p.469)

 こういう差異が楽しい.同一の蛾を指しているものかどうかさえ,揺らぎ出す.
 もしも図版が失われた状態で後代の学者がこれらの図鑑を解読するとき,彼らは深い思索に沈むかもしれない.
 本質的に,すべての文字は読まれねばならないのである.