ナミシャク特集(28),オオクロオビナミシャク.

 「オオ」で名前が始まる蛾が,実際は,他の類縁種と比べて,しばしばさっぱり大きくないのは当ブログでも頻出である.「オオ・コという名前の付け方は好ましくない」と述べる方までいる.
 オオクロオビナミシャクもご多分に漏れずで,「クロオビナミシャク」とほぼ同じサイズである.困ったものである.いたずらに人心を惑わすことこの上ない.老人が見え透いた詐欺に引っかかったり,金融工学の果てに株が暴落したりするのは案外こんなところにその根を持っているのである.


オオクロオビナミシャク Praethera praefecta
 08年05月08日.前翅長17mm.また例の「英国産敷物タイプ」のナミシャクである.
オオクロオビナミシャク Praethera praefecta
 08年05月01日.17mm.茶髪.


 この蛾の存在自体を忘れていなければ,同定はそれほどやっかいではなさそうだ.
 「ミヤマクロオビ」は内地分布で希少種でオオクロオビと同種かもしれないくらいだから除外できる.「クロオビ」は秋蛾.「モトクロオビ」は夏蛾で内側の帯に黒味がでる.「ソウウンクロオビ」も夏蛾で帯のコントラストが小さい.
 講談社『蛾類大図鑑』では翅模様はこんな感じ.

本種の前翅内横線より内側と,中横線と外横線のあいだは帯状に暗色,帯の中間と外側は灰色をおびた淡緑黄色.外横線はM2で深く内側に切れ込むことが多い.
(p.488)

 帯の中間,保育社『蛾類図鑑上』の図版はやけに薄緑である.だがわたしの画像でも「みんな蛾」でも,確かに少しだけ黄色味を感じるが「緑」には見えない.十分に新鮮な個体だと思うのだが….


 オオクロオビナミシャクの学名は Praethera praefecta .
 属名は「Thera属の前にあるもの」.Thera属が3つに分けられたものの1つである(もう一つはPennithera属,「翅のあるThera」).
 ちなみに「Heterothera 「異種のThera」)という属もあって,要するにこの類の蛾はおよそTheraとされていたものらしい.翅の感じはどれもこれも同じである.
 そもそものTheraとは,「thēra 狩猟,狩りの獲物」の意.
 種小名は「長官に任命された」.


 この蛾もネット上ではあまり語られていない.
オオクロオビナミシャク Praethera praefecta
 08年05月01日.2枚目と同個体.ついでだから正面画像も.
オオクロオビナミシャク
 こっち見んな,ではなく,カメラが回り込んだもの.


 これでようやくナミシャク特集は折り返し地点.もう,(;´ρ`)イヤーンです.
 現在,コバネナミの画像チェック中.ハネナガの画像を発見(*゚Д゚) ムホムホ.