ナミシャク特集(29),ハネナガコバネナミシャク.

 そういえば所ジョージの歌に「どうせあたしは夜の蝶,蛹の姿でいたものを/蛹のような顔をした女が一人,蝶々のような服を着て」という分かるような分からないような歌詞があったのを思い出したが,そんなことはどうでもよろしい.


 いよいよ足かけ2年企画のTrichoptryx,コバネナミシャク属である.Trichoptryx とは,「毛のある翅」の意.
 春先に出てくるどれもこれも似たり寄ったりの連中.苫小牧で4〜5月におびただしく出てくる.どれがどれか分からなくなって,しまいには撮るのさえ面倒になる手合いである.
 今回,過去の画像をチェックして,測定のみ目的の,ピントも露出もテキトーな写真だらけで呆れているところ.使えない.同定にならない代物.
 なんとか5種確認.


 というわけで無難なところから.北方系の珍しめの蛾である.
ハネナガコバネナミシャク Trichopteryx polycommata
 ハネナガコバネナミシャク.08年04月16日.前翅長16mm.
 日本では釧路が本場らしい.釧路の春は苫小牧に輪を掛けて薄ら寒くてじけじけである.ゴールデンウィークが終わるまで桜は咲かないと思った方がいい.この蛾はそういう土地を好むようだ.
 というわけでヨーロッパである.「Lepidoptera and some other life forms」の「Trichoptryx」の分布マップを参照されたい.EU諸国はすべて釧路や苫小牧のような気候だと思ってよいのだろう.
 ページに英名も出ている.名前が付いているのだから,結構ポピュラーな蛾なのだろう.「Barred Tooth-striped」とのこと.「ハガタヨコジマ蛾」という感じだろう.


 ハガタヨ,じゃなくてハネナガコバネナミシャクの学名は Trichopteryx polycommata .属名は上記.
 種小名は「polys 多い」+「commatos コンマの」.コンマは例の句読点のコンマである.外縁の黒点を示したものだろうか.
海外サイトの画像を見ると黒点が2つずつセットになっている.フランス語で「comma」というと「:」を指す(普通は「:」はdeux-points.ちなみに「,」はvirgule)ので,話としてはそちらの方が面白いが,ただの思いつきである.