「詩を本に載せませんか」

 夜.電話が来る.基本的に電話は嫌い.世の中には連絡が付かなくてもいいことが沢山ある.連絡がなくて手遅れになっても,あきらめればいいだけである.昔はそうだったはずだ.
 受話器を取る.女の声がする.「詩をよんでいる(詠んでいる?)××様はいらっしゃるでしょうか」.わたしである.


 女の口調がなれなれしい.相手に対する敬意のかけらも感じさせないセールスマニュアルのそれである.いや,最低だな.こんなセールストークで引っかかる奴がこの世の中にいるのだろうか.


 要するにわたしの詩を,評論家の批評と一緒に本に載せたいとの話.ロハなら提供してやってもいいと思う.
 ところが案の定,こちらが金銭を負担しなければならないという展開になる.本が出なければ詐欺だが,おそらく本自体はちょろちょろっと出版されるのだろう.でもメリットは100%ない.お断りだね.


 いい加減な自費出版トラブルの話は昔からの定番である.
 電話営業を掛けてくるようになったのだな.だいたいわたしの自宅の電話番号をどうやって調べたのだろう.詩集でも同人誌でもわたしはすべて「職場の電話番号」しか公表していない.
 「詩を詠む」なんて表現が出てきたのも,俳句や短歌をやっている人がメインターゲットなので,マニュアルがそのままだったのだろう.まともな出版関係者がそんな言葉遣いをするはずがないじゃん.


 それにしてもセールスのねえちゃんは仕事を選ぶべき.職業に貴賎はあるんだよ.馬鹿なことをやっていると馬鹿になるよ.
 そういえば先日の手稲でも,「マイナスイオンが何だか」という説明会,集まった年寄り相手に何かペラペラとまだ若そうな兄ちゃんがしゃべっていたなあ.その口調も卑しい響きをしていた.収入はいいのかもしれないが,そんなことで人生を消費してしまうはもったいないと思う.