Actias属の錯綜について(1)。

 ところでオオミズアオの Actias 属である。
 2008年の大きな話題となった「Actias artemis → Actias aliena」の変更。相変わらずこのブログはノン−タイムリーだねえ。
 これについては,がいすとさんの「MothProgオオミズアオの学名変更:ミステリアスなアルテミス」参照されたい。乱暴に言えば,要するに何がどうなっているのかよく分からない状況にあるということである。
 試みに,サイト「Lepidoptera and other life forms」の「Actias」の項を開いてみると,おびただしいシノニム(別種・新種だと思ったら実は既知の種と同じだったというハズレ名前)の山である。このページでは亜種を扱っていないから,そこまでていねいに見ていくなら,大変なことになっているに違いない(講談社『大図鑑』でどうなっているかは次回で)。


 単にこの属の模様の変化が不安定なばかりではなく,「大きくて目立つ」バイアスがかかっていたずらに細分化されているような気がしなくもない。


 というわけで,現在文献拾い読み中。何はともあれ,リンネから始めるのが常道であろう。
 リンネ『自然の体系』では Phalaena luna を記述している。この蛾は現在,Actias luna 。日本には分布しない。画像は上記のサイトからたどっていただきたい。
 Linnaeus,Systema naturae,t.1,10ed.,p.496。[ ]および下線強調は引用者による。

Luna.
5.P.Bombyx[当ブログ09-02-03記事参照]。口器を持たない。翅には伸びた尾があり,翅全体が黄緑色。眼状紋は半月形に折れ曲がる
Catesb.car.2.p.84.t.84. Pet.gaz.t.14.f.5.
アメリカ北部地方に分布。Kalmii[北アメリカの採集家]。

http://www.archive.org/stream/carolilinnaeisys12linn#page/496/mode/1up

 Catesb.云々は次回まわし。


 種小名の“Luna”が大文字で始まっているのは,リンネにおいては名詞であることを示している。「月」あるいは「月の女神」の意。
 “Luna”の名は今まで,その青白い美しい姿からの命名だと思っていたが,引用下線部の原語が“lunato”(luno 月形に折り曲げる,の完了分詞)である。どうやら,種小名の由来は「眼状紋の形」からであるようだ。
次回に続く