Cocytia・・・。(2)

 朝。「生物多様性遺産書庫」のサイトが落ちているなう(休み?)。
 というわけで訳出。休日は居眠りと外国語で終わりそうだ。5日にメールで送らなければならないレポートは明日まわし。


 ◎ Annuals de la Société entomologique de France,Tome 6,1837,pp.359〜360
 「フランス昆虫学会紀要」第6号から,ゲネー(Guenée)による項目「Glottula属」の部分訳。イタリック体は用いない。〔 〕は引用者註。改行は任意に行っているが,原著における改行は〔P〕で示す。

 〔Tribu Ⅵ. Noctuelidi(第6族,ヤガ)〕
 第4属。Glottula (拙命名〔ぐろーとつら,「小さな舌」の意〕
 Cocytia,Treitschke;NoctuaとHadena,Boisduval
〔…〕

ちなみにヤガの属について,この論文で取り上げられているもの。

  1. Heliophobus属 (現,ヨトウガ亜科 Sideridis属=フクサビヨトウなど)
  2. Agrotis属 (現,モンヤガ亜科,Agrotis属=カブラヤガなど)
  3. Xylophasia属 (現,ヨトウガ亜科 Apamea属=ネスジシラクモヨトウなど)
  4. Glottula属 (現,ハマオモトヨトウ類 Brithys属=ハマオモトヨトウなど)
  5. Noctua属 (かなり出入りがある模様。現在,Noctua属は日本に分布せず。タイプは pronuba種
  6. Cergo属 (現,ヨトウガ亜科 Thalpophila属,日本に分布せず。タイプは matura種
  7. Triphaena属 (現,Noctua属へ。日本に分布せず。Triphaena innuba はpronubaのシノニム)

 ヨーロッパはなかなかにヤガの層が厚い。

 この新属は,トライチュケ〔Georg Friedrich Treitschke,1776-1842。ドイツのリブレット作者,鱗翅学者。参考:Wikipedia〕氏によって,コーキューティア〔Cocytia〕の名で創設された。
 しかしこの名称は,かなり以前にボワデュヴァル〔Jean Baptiste Boisduval,1799-1879。フランスの鱗翅学者。参考:Wikipedia〕氏がマダラガ科のモノグラフの中で創設した属に使用済みである。従って,わたしは属名を変更せねばならなかった。
 代わりにつけた名称は,口吻が極端に短く,ヤガ科の中では特異なことに着目したものである。

 1837年において,ゲネーはコーキューティアをマダラガと見なしていると考えてよいだろう。

 〔P〕
 グロートツラ属はこれまでアグローティス〔Agotis,「農夫」の意。カブラヤガなど〕属と混同されてきており,実際,幼虫だけを調べれば極めて良く似ているのである。形態,全く異なる色合いとはいえ光沢のないこと,特に,よく輝く小さないぼ状の点が規則的にあることは,その族に位置するのを明確に示している。
 習性についてこれまで得ることができた曖昧な情報も,やはり上記の意見を確信させるに足るものである。
 〔P〕
 しかし,幼虫に依拠してこの種をアグローティスという大きな属に入れておいたとしても,成虫を研究すれば早晩,新属の創設が不可欠になることだろう。このことこそ,良い観察を目指す昆虫学者一人一人に対して理解して欲しいところである。上記〔訳文では略している〕の特徴をアグローティス属やクシロファシア〔Xylophasia〕属と比較されたい。

 新属を立てるに当たっては,かなり力が入ってしまうものらしい。

 この属を構成する2種〔Pancratii種と Encausta種。現在は両者ともに Brithys crini(ハマオモトヨトウ)のシノニムとされる〕の後翅はくすんだ白色で,雄では無地,雌では基部にわずかに黒い影のみが入る。
 この属は現在までヨーロッパ中部だけで見つかっている。


 これが1837年の Cocytia の状況。1852年の Cocytodes からはすっかり脱線した世界に入ってしまった。どうせ人生自体がブレまくりだから,ブログの展開がすっ飛んでしまおうが驚くに値しない。
 次回(3)は,またぞろ Cocytia資料の訳出です。