Cocytia・・・。(8)
続き続き。
今回は,イギリスの J.G. Wood の「Insects abroad : being a popular account of foreign insects, their structure, habits, and transformations 」,1883(初版1874)。
「俗説」と訳すのも意味的に妙だから,タイトルは「国外の昆虫たち:海外の昆虫の構造・習性・変態をやさしく解説する」という相場だろうか。
著者のウッドについては,小西正泰『虫と人と本と』(創森社)の中でページが割かれている。専門家の協力のもと,一般向けの博物学の本を書いたり講演活動を行ったりした,サイエンスライターの走りのような人だったらしい(pp.327-330)。
この『国外の昆虫たち』*1は面白い本でぜひリンク先を見て欲しいのだが,とにかく600枚を誇る挿絵(おそらくエッチング)が圧巻。*2
例えば最初のイラスト。
アフリカのエンマハンミョウの類。雑甲屋ならずともたまらない。当時のイギリスの虫好きの子供や大人がどれほど胸をときめかしたことか。
誰か訳してくれないかな。800ページ近い大著ですが。
というわけで,原文の簡潔さを再現するのはわたしには無理なのだけど,コーキューティア。P.647。改行はピリオドごと,本文での改行は〔P〕で示す。
見出しもなしにいきなり始まる。挿絵の説明というスタイルらしい。
この美しい昆虫を説明するにあたって,色合いを上手く表現する手段がないのは全くもって明白である。
印刷インクのただの黒白で表しただけでも,間違いなく目を射る昆虫。だが,現物のその色彩といえば,これはもう絶品なのである。
しかし翅にはほとんど色がない。すっかり透明で,太い黒線で縁取られている。唯一の例外は基部のオレンジ色の紋である。
〔P〕
一番の美しさはその胴体にある。
胸は深い黒色。そして尾の先端も,金色の毛の小さな紋を除いて,黒い。
腹の残りの部分は最高に輝く青色で,緑色にきらめき,サテンのような光沢をしている。
この美しい昆虫はニューギニア原産である。
日本の高校生でも十分に読める英語。イギリスはやっぱり博物学の本場である。子供の頃からこういう本を読んでいれば,どうしたって民度が高くなってしまう。
次回は,ボワデュヴァル,バトラー,カービーと行きましょう。