プライヤハマキ小勉強会。
ところで,プライヤハマキの和名「プライヤ」はいつもの Pryer さんに決まっているとして(参照:小西 正泰「著者プライヤーとその周辺」),でも学名は“Acleris affinatana”(あくれりす あふぃーなーたな)である。affinatana はおそらく,「類縁である,類似している」の意。せっかくだからちょっと調べてみる。たいして面倒にはならないだろう。
案の定である。シノニムに“Oxygrapha pryerana”(おくしぐらふぁ ぷらいらな)がすぐに出てくる。「鋭い線 プライヤーの」の意。
この学名から和名が作られたのだろう。
それじゃあ,もうちょっと。それじゃあ“Oxygrapha pryerana”の原記載を見てみる。
「The Annals and magazine of natural history; zoology, botany, and geology」,7th ser. v. 5 ,1900の「Lord Walsingham on Asiatic Tortricitidae」から関係部分だけ。
生息地:日本(Prayer,1886),本土−横浜(Manley,1888)。標本22体。
http://www.archive.org/stream/annalsmagazineof751900lond#page/375/mode/1up
変異に富む種で Teras ferrugana にごく近いが,とりわけ前縁が明らかに下方に曲がっている点で異なる。西洋の種では直線となる。鱗片塊もまた pryerana はより明瞭である。
(p.376)
結局,属名も種名もシノニムになったということである。概してハマキのここら辺はシノニムまみれであって,個体変異に過去の専門家も苦しみ抜いたのが思い浮かばれる。ましてや絵合わせ専のシロートにハマキの同定ができなくてもトーゼンなのである。
上記引用に出てきた“Teras ferrugana”(てらす ふぇるるーがな,「怪異,不思議 鉄さび色の」の意)は,これも現在は Aclelis 属になっているのだが,日本には分布しない蛾。画像は「Acleris ferrugana - UKMoths」参照。うん,まあ,そうだろうなあ。よくもまあ同じような。
pryerana の命名者のウォルシンガム(参照:「Thomas de Grey, 6th Baron Walsingham - Wikipedia, the free encyclopedia」。とにかく偉い人らしい)は affinatana 種についても同書で述べているが,pryerana 種との類似は触れていない。
やっぱり読み比べないとダメかな。(ノToT)ノ┫:・'.::・┻┻:・'.::・
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調べ事ばかりで疲れたので,ちょっとブレイク。
Acleris affinatana の原記載である「Tijdchrift voor Entomologie」26巻,1883 の図版。
(http://www.archive.org/stream/tijdschriftvoore26188283nede#page/n370/mode/1up)
本文はオランダ語だったりするので全然だよ。
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というわけで,とうとう面倒なことになってしまった。シロートには荷が重い専門用語だらけの文献読み。わたしはとりあえずコンピュータ将棋の中継を見たいのだけど。
というわけで明日回し(w)。
とりあえずここまでのまとめ。
- 「プライヤハマキ(Acleris affinatana)」の和名は現学名のシノニムである prayerana にちなむものの可能性が高い。
- ウォルシンガムは prayerana と affinatana とを別種と見なして記載を行っている。
1はOKとして,次は2である。どうして別種に分類したのか。次回。