怪物としての鱗翅,番外編。

 実は総選挙は行かなかったのである。ホカイド9区の某元ソーリに反対票を投じるつもりだったが,引退ということで気力が失せた。赤っぽいわたしだが,ジャパンKS党は憲法第1章さえも護持する気らしいので支持しない。それにしてもアレな結果である。これでまた4年間解散なしだろう。


 カギバガに思ったよりも面白いネタがないので,結構くじけている。どうしよう。
 というわけで見通しなしの繋ぎ作業です。


 昨シーズンの冬は「怪物としての鱗翅」と称してビデオゲームに出てくる蛾の怪物をとりあげたのだけど,よく11回も続いたものである。 今回は番外編。「ホラー的な小道具としての鱗翅標本」。
 どうにも,薄気味悪い古い洋館には,かび臭い書棚や,火事の元になりそうな燭台や,やたら大きなご先祖様の肖像画と並んで,昆虫標本が付き物なのである。蝶や蛾の標本が流行したのは19世紀のイギリス帝国だから,なるほど現代から見れば貴族の古いお屋敷にふさわしいアクセサリーなのだろう。
 とはいえ,ヴィクトリア朝の方々が標本を飾ったのは「自分の住居を気味悪くするため」ではないに決まっている。それはアジア・オセアニアを植民地化していったイギリスの力を表象する愛国的な記号であっただろうし,また,なによりもそれが彼らの目に「美しかった」からに違いない。
 現代,しばしば標本たちが「不気味なオブジェ」として扱われるの不幸なことである(確かに即物的には昆虫の乾燥した死骸でしかないのだが)。とりわけ蛾を嫌う人々の無意識には,ゲームや映画を通じて「蛾=ホラー的な何か」という情報が刷り込まれているのではなかろうか(違うかもしれない)。
 ゲームにおける性描写や残虐描写にはわたしは極めて寛容なのであるが,自称蛾屋の一員としては蛾への恐怖をインプリンティングすることについてはどうなのだろうかと思ったりすることもある。


 というわけで実例です。
 まず前回も取り上げた2005年カプコン「DEMENTO」。ニコ動「微妙に違うDEMENTOはいかが? その7」からキャプ。
 錬金術師の城の一室。

 右手の壁に標本があるある。それにしても大きすぎないかい。

 種まではわからない。ニシキツバメの類に思える。錬金術師のこの部屋に昆虫標本の必然性があるはずがないから,これはやっぱりムード作りでしかない。チェス盤なんかもあざといねえ。


 もう1つ。これも前回取り上げている「バイオハザード CODE:Veronica」。ニコ動「【ゆっくり実況】バイオハザード コードベロニカ完全版を攻略part12」から。

 由緒ある貴族の館の書斎。モルフォがこれまた大き過ぎる。主観的にはこれほどのサイズに見えているのかもしれない。慣れていない人はオオミズアオでさえ巨大な蛾に感じられるらしい。とはいえ,こんな大きな鱗翅をどうやれば翅を痛めずに採集できるか心配である。

 右手の標本箱。左上隅がニシキツバメガ,その下がメダマヤママユにみえる。あとは全然わからない。ご教示いただければ幸いである。