イシムカデの類。ムカデ勉強会(1)。
土曜日だけど朝一番で出勤。死にそうである。
寄ったコンビニのドアの所にフユシャクが2頭。コマトマイではフユシャクは稀覯品に属するものだったが,エンガーでは生活圏で普通に見かける。そういう土地柄なんだなあ(あまり嬉しくない)。
別居,と言ったら不穏当か。わたしが単身赴任である。ということで細君からメールがくる。2,3日に1度くる。
このような
恐ろしい形の虫が家の中にいたので、寒空の中外に出そうと思います。
なんという虫か分かりますか?
写メ画像なので,ちょっとこちらで加工。
一瞬ヤスデかと。よく見ると脚が影で2重になっている。ムカデである。背景はわたしがかつて百均で買ってきたお盆。
大雑把には,ムカデは脚の数で判断する。こいつは15対なのでイシムカデ目である。 「ムカデである」と返信。細君はムカデという言葉は知っていたが,実物は初見だったとのこと。いい歳をして恥ずべきことである。
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冬だしね。リハビリをボチボチやらなければ。今のところ新しいクスリが効いていて,アタマがほどほどマトモだし。
せっかくだから,ムカデの勉強会。
以下,分類・訳語については「Encyclopedia of Life」Myriapoda ,および田辺力『多足類読本』(東海大学出版会)を参考にした。
- 作者: 田辺力
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 2001/02/01
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高次の分類から行こうか。
- 節足動物門 Arthropoda(あるとろ/ぽだ)
- [ギ] arthron 節・関節 + pous 足
- 多足亜門 Myriapoda(みりあ/ぽだ)
- [ギ] myrias 万 + pous 足
ちょっと脚が多過ぎやしないか。ところで -poda は(ぽーだ)と読まれていることが多いが,わたしのラテン語力ではよく分からない。
この「万足虫」が4綱 Class に分かれる。
- 唇脚(ムカデ)綱 Chilopoda (きろ/ぽだ)
- [ギ] chilos 口唇 + pous 足
- 倍脚(ヤスデ)綱 Diplopoda (でぃぷろ/ぽだ)
- [ギ] diplos 2倍 + pous 足
- 小脚(エダヒゲムシ)綱 Pauropoda (ぱうろ/ぽだ)
- [ギ] pauros 小さい + pous 足
- 結合(コムカデ)綱 Symphyla (しむ/ふぃら)
- [ギ] syn- 結びついた・合わせられた + phylê 種族
どれも直訳。
てっきり,ムカデは chilios(千)pous(足)だと思っていた。「唇」というのは毒牙を持つことを示したものだろうか。でも外野の人間にとっては Chiliopoda の誤記の可能性も捨てがたい。
コムカデの「結合」というのがヘンテコだが,『世界大百科事典』によれば「分類学上はムカデと昆虫を結び合わせるような位置を占めるので,結合類と呼ばれた」(http://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%83%87)とのこと。
いづれにせよ,後ろ2綱は,わたしにとっては「向こう側」の存在。
ムカデ綱は2亜綱に分かれる。
「Centipede - Wikipedia」によれば(任意改行),
ムカデ綱は2系統に分けられる。すなわち,ゲジ目を含む背気門亜綱 Notostigmaorpha と,他の4目〔訳註:イシムカデ目・ナガズイシムカデ目・オオムカデ目・ジムカデ目〕を含む側気門亜綱 Pleurostigmorpha の2つである。
(…)かつては,ムカデ綱は改形亜綱 Anamorpha (ゲジ目とイシムカデ目)と整形亜綱 Epimorpha (ジムカデ目とオオムカデ目)に変態様式によって分けられると考えられていた(ナガズイシムカデ目の位置は不確定である〔訳註:田辺『多足目読本』では「半増節変態=改形亜綱」としている。pp.108,110〕)。
近年の系統発生学における,複合分子と形態学的形質を用いた解析は前者の系統を支持している〔原註:G. D. Edgecombe & G. Giribet (2002). "Myriapod phylogeny and the relationships of Chilopoda". In J. Llorente Bousquets & J. J. Morrone. Biodiversidad, Taxonomía y Biogeografia de Artrópodos de México: Hacia una Síntesis de su Conocimiento, Volumen III. Universidad Nacional Autónoma de México. pp. 143-168.〕。
整形亜綱は側気門亜綱中の単系統グループとしてとどまるが,改形亜綱は側系統(偽系統)である。
こんぐらがってきたので用語確認。(田辺,pp.99,100,110)
背気門亜綱→気門が背板上にある。
側気門亜綱→気門が体側部にある。
改形亜綱→半増節変態する。すなわち,「死ぬまで脱皮とそれにともなう体サイズの増加は続くが,ある脱皮以降,胴節数の増加はない」。
整形亜綱→整形変態する。すなわち,「死ぬまで脱皮とそれにともなう体サイズの増加は続くが,胴節数は増えない」。
ちなみに『多足類読本』では両論併記,日本語版Wikipedia「ムカデ - Wikipedia」では後者の分類を採っている。
亜綱はそれはそうとして,目は4つ。
でも疲れた。この項つづく。