江本氏の死去について今頃知った。
わたしの父親がガンで死んだのが数年前。親の家に行くと今でも「トルマリンの布団」やら「磁気治療器」やら「キノコ」やらが残っている。両親に標準的な科学知識が不足していたのだからしかたない。相談されれば絶対に買わせなかった。
(自覚していたかどうかはともかく)溺れる者の死臭をかぎつけて金銭を巻き上げる連中がいる。彼らはハゲタカのようなスカベンジャーですらない。無駄なものを作ってゴミを増やす以上の機能を持たない。
ここから本題。
お礼を言われた水を凍らして本を売った江本勝が,昨年死んでいたことを偶然知った。彼が本気だったのか自覚的ペテン師だったかは分からない。いずれにせよ科学的にダメダメであって,負の存在である。ちょっと理科が好きだったり,良識が働きさえすれば子どもにだっておかしさが分かる。死者を叩くことはともあれ,彼の主張とその商売はいくらでも叩かれるべきである。
疑似科学と結びつくのでなければ,彼が水に何を幾ら語りかけようと勝手なのだが,著書をファンタジーでないものとして流通させたり,会社を立ち上げて高価なラジオニクスを販売したりしている。これは罪深い。
彼が会長をしていた(株)I. H. M のサイト(ドメインが波動コム!),とりわけ通販のページを見ると,これが大変なことになっている。「電磁波モノ」「ラジオニクス」は定番の当然として「ヴィバルディの曲を1年間聴かせた味噌」まで扱っている。この味噌は2個パックで2千円なにがしなのだが1個あたりのグラム数が示されていないので不安で注文できそうもない。
EM菌も絡んでいる。仲間らしい。波動なんかに関係してはもともと疑わしいEMの信頼度がますます落ちるのではないかと心配になる。商品は飲料のほか,EM菌のエキスを利用して加工した腹巻きや靴下である。どうにも筋悪に思えるが,「波動」の領域だから平気らしい。
本気で信じ込んで通常医療を受けない御仁が出てきかねない。疑似医療(健康法)が広まるのは結構危険でさえある。
エボラ出血熱の感染源の一人はヒーラーだったという話だってある(AFPBB NEWS, 「シエラレオネ、エボラ流行は一人の「ヒーラーから」 医療当局者」)。また,アフリカでのエイズの蔓延も一因として民間療法への依存があるという(カリッチマン『エイズを弄ぶ人々』参照)。南北問題と無知とがもたらした悲劇である。
- 作者: S. C. Kalichman,野中香方子
- 出版社/メーカー: 化学同人
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日本に戻って,一般医療が万能とは言わないが,「波動」は明らかにダメそう。現状で他人に勧めたり,ましてや商品化なんてとんでもないと思う。
そういえば,『水は答えを知っている』が文庫化されているが,出版社は一部で有名な「サンマーク出版」である。類は(ry 。
わたしは以前ナイチンゲール関係の本を調べていて「何か調子のおかしな本だけど何だこれは」と思って確かめたら,これがサンマーク出版だった思い出がある。やっぱりナイチンゲールはアンチョコに頼ったりしないで『覚え書き』から入るべきである。
この出版社,新聞広告もずいぶん出しているようだし経営は順調なのだろう。ご同慶の至りに堪えない。わたしは特殊な興味による場合以外はもう買いません。