『VOX LATINA』における二重の子音の発音について。
Twitterではいろいろな話題が交錯していて,たまに学名やそのラテン語が浮上してくる。
先般,「ll」のような二重になった子音のカナ表記が話題になっていて,古典ラテン語の発音の古典であるW. SIDNEY ALLEN 『VOX LATINA』が取り上げられていた。
この本はかつて購入しているのだけれど,今はロハでダウンロードできる。いい時代になったものである。
http://www.ganino.com/files/Latin%20Copyright%20Books/29%20Vox%20Latina%20The%20Pronunciation%20of%20Classical%20Latin.pdf
- 作者: Allen
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2008/01/12
- メディア: ペーパーバック
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個々の音を詳細に見ていくのに先だって,重要なことを示しておく。
すなわち,ラテン語で書かれている「二重の」子音はどこに置かれていても,それに対応しての長い音を表している。
このことは,先行する音節の量(quantity)への影響から明らかであって,たとえば accidet や ille の第1音節の母音は短音であるにもかかわらず必ず「重音節」となる(p.89参照)。
韻文のことは別にしても,発音においてもこれは必然的である。なぜなら,そうしなければ ager と agger ,anus と annus のようなペアの区別がつかなくなる。
英語の話し手はこの点にとりわけ注意する必要がある。なぜならこのように発音する二重子音は,英語では複合語の要素として分割される場合だけ, rat-tail,hop-pole,bus-service,unnamedなどだけだからである。それ以外は,英語の二重子音は(たとえば bitter,happy,runningのように)先行する母音が短母音であることを指示する機能しか持っていない。
英語の複合語は端的に言えば,ラテン語の二重(あるいは「長い」)子音を正しく発音する有益なモデルとなっているのである。
これを解釈すれば,研究社『羅和辞典』の「同じ子音が重なっているときは,その子音を2度発音する。」ということになると思う。というわけで,1月20日のガイドラインの7。はもう少し頑張る予定。