Costaconvexa属・Dysstroma属更新。Dysstroma のジェンダーについて。
HP更新。
- Costaconvexa属
- 命名者の Agenjo(あげんじょ,と読むらしい)はスペインの大物昆虫学者。参照:「Ramón Agenjo Cecilia - Wikipedia, la enciclopedia libre」(スペイン語だがgoogle翻訳でどうにでもなる。日本語でよく分からなければ,英仏の方が翻訳がまともに近い)。
考え出すとこれは面倒くさい。『国際動物命名規約第4版』(日本語訳はhttp://www.ujssb.org/iczn/pdf/iczn4_jp_.pdf)ではこう。
(p. 30)
30.1.2
属階級群名であって,ラテン文字への換字のみを施しそれ以外変更していないギリシア語の単語であるかまたはそれに終わるものは,標準的ギリシア語辞書のなかでその単語に与えられている性をとる。
つまり,「ギリシア語まんまのものは,ギリシア語での性」ということ。「stroma」はギリシア語“στρωμα”そのまま。この語は「中性」である。だから厳密にやるなら,種小名語尾は中性形 -um になるべき。実際はそうなっていない。
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- サイト「Lepidoptera and some other life forms」(これは非常に便利なサイトである)の「Dysstroma」の項では,女性形と中性形が混在している。
- 「みんなで作る日本産蛾類図鑑」では,「中性形」に統一されている。(これは英断だと思う)。
- その他,「EOL」ではすべて「女性形」。
- その他の研究者の記載文でも大抵は「女性形」。
- 平嶋義宏,1983,やどりが 113, 114: 12 では,「中性」に直すことを主張している。
(…)Dysstromaという属名もある。前節のdys−(δυσ.)は不分離接頭辞で,“悪い”“不幸な”などをあらわす。本属は女性に扱われている。本属には8種の邦産種があるが,そのうちの7種の種名の語尾を訂正せねばならない。
混乱しているのだが,それでも,規約を厳密に適用するなら,これはやっぱり「中性」である。ところが「EOL」に代表されるように,慣用的には Dysstroma は女性ジェンダーで扱われている。囲碁将棋用語でいうなら「味が悪い」状況である。
さて,命名者のヒュブナーは Dysstroma の最初の蛾を「Dysstroma Russata」としていて,これは女性形である。規約では「何だか分からないものは命名者が性を指定する」となっていて,どうやら今回のケースは(すでに女性で定着しているということもあるだろうが)「命名した Hübner の意向を尊重して」という相場だと考えられる。
というわけで色々大変なのである。こんな学名調べからでも「分類するとはそもそもどういうことか」とか「種とはそもそも何か」などの問に発展しかねない。分類学とはおそらく「歴史学」や「知識論哲学」のジャンルに属するに違いないと思うようになってきている。(そして,そういう問題を扱った論文がやたら難しい。困る)。
おまけ。まるきりお遊戯会だね。何も考えずに見ましょう。
谷山浩子は次世代あたりには忘れられる歌手なのだろうけども,もったいないなあという感想。