ナミシャク特集(3),シラナミナミシャク.
苫小牧で薮に足を踏み込んだ時に飛び出してくる蛾で,目立つのがウスグロアツバ.その次が今回取り上げるシラナミナミシャク.シロアヤヒメノメイガはもっと開けた草地を好むようだ.
ウスグロアツバにせよシラナミナミシャクにせよ,飛び立った後,すぐに葉の裏に隠れてしまう.
08年08月09日.こんな感じになる.
場所が許せば下に潜り込んで見上げるポーズで撮るのだが,その途中で逃げられてしまうことも多い.
これは葉の上に上ったところ.落ち着きがない.
同日.
シラナミナミシャクはネット上の情報の妙に少ない蛾である.北方系であって,あまり馴染みがないことが最大の理由らしい.苫小牧ではよく見かける蛾だけに意外である.
08年08月15日.前翅長15mm.中型の蛾.クリーム色の地肌に白い波が幾つも走る.
保育社『蛾類図鑑』.
触角は♂♀とも絲状.前翅の小室は2個.…他の亜種は朝鮮・満州・アムール・華西に分布する.
(p.202)
北隆館『昆虫大図鑑1』.
満州とか支那(←ATOKで一発変換できなかった)とか,現在に比べればおおらかなものである.
講談社『蛾類大図鑑』.
触角は♂♀ともほとんど糸状に近い.前翅の小室は1個.…北海道,本州(関東から中部山地)のものは原亜種名,朝鮮,中国東北,シベリア南東部のもの,中国西部のものはそれぞれ別亜種とされている.
(p.474)
2点の変更.小室(ナオキとかテツヤとはもちろん無関係である)については訂正なのか誤植なのかわたしには判断できない.地名についても,出版社の意向なのか書き手の政治意識の反映なのか,これもわたしには何ともいえない.
シベリアの亜種については「Colour Atlas of the Siberian Lepidoptera」に「albostrigaria亜種」の画像がある.日本の原亜種とどこが違っているか全く分からない.
学名は Glaucorhoe unduliferaria unduliferaria .
属名は「glaukos 銀色の,輝く」+「rhoē 川,流れ」.なかなか美しい属名である.
種小名・亜種名は「undo 波打つ」+「fero もたらす」+接尾辞.「波になっている」という相場である.
こうやってみると,「シラナミナミシャク」は学名を消化した巧みな和名だったりする.