ナミシャク特集(7),オオハガタナミシャク.
種の珍しさでも,虫の知識でも,画像の鮮やかさでも他のサイトやブログにかなわないのが分かっているので,定点観測にこだわったり,図鑑を読み比べてみたり,学名の判じ物をやったりしている.
ニッチ産業みたいなものだが,あまり成功していない気がする.
さて問題は,やっぱり学名はよく分からない.かじった程度の古典語力なのだから仕方ない.平沼学名学の一連の労作によって,学名はずいぶん調べやすくなったが,それでも分からないものが沢山出てくる.
学名はラテン語の顔付きと規則に従ってさえいれば,それこそ無意味綴りでもかまわない.スペルミスあり,特殊外国語(現地語)由来あり,謎の造語あり,アナグラムありの世界である.
もちろん,そんな手合いばかりではなく,多くの学名は良心的である.
だからこそ,わたしのようなトウシロウが辞書片手(本当は5冊くらい稼働するので片手では×.猫の手も借りたいのだが,連中は本を持てないし,そもそもわたしは猫が嫌いである.連中は灯火下で蛾を荒らす)に遊ぶことができているのである.
07年08月04日.前翅長16mm.
これはオオハガタナミシャク.前回のハガタナミシャクとの違いははっきりしている.根元側の帯に明らかに元気がない.うにょっとしただけで力尽きている.
サイズも「オオ」にもかかわらず看板に偽りありで,少し小さい.北隆館『昆虫大図鑑1』では前翅長でハガタが「17〜25mm」,オオハガタが「14〜18mm」とされる.逆である.
同様のねじれは(数字は北隆館本から)
- オオシロオビアオシャク:25〜30mm
- シロオビアオシャク(未見):19〜27mm
- コシロオビアオシャク:23〜29mm
にも見られる.
ちなみに「ヒメハガタナミシャク」という蛾もいて,これは「11〜13mm」でセーフである.この記事を起こすに当たって,ストック画像をチェックしたが「ヒメハガタ」はまだ記録していない.
07年06月15日.前翅長14mm.
オオハガタナミシャクの学名は Ecliptopera umbrosaria umbrosaria .
属名が困った.前節は文法的には自信がないなりに「ekleiptia 蝕」だと思うのだが,後節がオテアゲ状態.「-pera」になるような語はわたしには見つからなかった.ラテン語の「opera 労働」もしっくりこない.「ptera 翅」の恣意的な改変と見なすのも,他の蛾の属名に「Odontopera」「Spilopera」などある以上は難しい.
というわけで「不明」.宿題である.
※Emmet『The Scientific Names of the British Lepidoptera』によれば,ギリシア語「ekleipō 欠ける」+「ops,opos 外観,顔付き」(p.169).語幹に「t」が入るのが分からなかった. (((´・ω・`)ショボーン.翅型に由来するらしいが記述を読んでもピンとこなかった.
種小名は「umbrosa」+接尾語.「闇」とか「影」の意.
08年08月23日.大きめの個体,20mm.
黄色が強い.新鮮だからなのか,この個体特有の変異なのかは分からない.同属に「ソトキナミシャク」というのがいるが,そちらとは違うようだ.