ナミシャク特集(10),キンオビナミシャク.

 洋書の件はどうやっても来月の終わり頃くらいになりそう.


 それさておき,今回の蛾はこの系統の模様のそれの中では十分に美麗種である.

 キンオビナミシャク.08年06月15日.前翅長19mm.
 昔プラモデルの色塗りをしたとき,金のラッカーは溶剤の中に荒い金色の粒子が溶け込んでいて,他の塗料とは明らかに様子が違っていた.ビンをよく振らないと,溶剤ばかりで薄くまばらにしか金色に塗れなかったりする.
 この蛾の「金帯」の塗りもちょうどそういう感じだ.



 上の蛾のアップ画像.やっぱりこうでなくては面白くない.


 これは金帯の白っぽい個体.

 08年06月30日.17mm.講談社『蛾類大図鑑』では,

色彩,斑紋はかなり変異性に富み,前翅基部と中央の黒色部以外は白いが,個体によっては金色をおびる.
(p.476)

 金色がデフォルトということでもないようだ.でもわたしが見かけるのはどれも金色である.この蛾も擦れモノだろう.



 類似種に「ヒメキンオビナミシャク」がいて,nabeさんの「Nature Column In Kochi 高知の自然」の08年2月17日記事「ヒメキンオビナミシャク」に画像がある.
 『蛾類大図鑑』によれば相違点は,「小さい」・「金色が濃い」・「キンオビでは切れたり切れなかったりする黒帯部が切れていない」こと.なるほどnabeさんの画像を見ると黒帯の形が違う.くびれになっておらず,切れる意志を見せていない(『蛾類大図鑑』でも確認).
 苫小牧にも分布していて,混生している可能性が大きい.今回,過去画像をチェックしてみたがどれもキンオビのようである.
 これが最も怪しい個体.

 07年06年15日.サイズが15mmと小さめだが,黒帯の形はやはりキンオビである.「くびれ」があって切れたがっている.


 キンオビナミシャクの学名は Electrophaes corylata granitalis .
 属名は「elektron」+「phaos 光」.エレクトロンというのはもともとは「琥珀」.とすれば「琥珀の光」となる.しかし,属名の命名は20世紀に入ってからなので「電気」の意かもしれない.その場合は「電光」になる.どちらもありそうである.
 種小名は「ハシバミの」.食草から.「みんな蛾」では食草はダケカンバとなっているが,「oNLINE植物アルバム」を調べるとハシバミもダケカンバも同じカバノキ科である.ひょっとしたら,シラカバやハンノキも食べるのではないだろうか.
 亜種名がやっかい.ラテン語的には「granum 穀粒」由来なのだが,「t」が分からない.ラテン語ではなく「granite 花崗岩」にラテン語の接尾辞がついたのでは.