ナミシャク特集(17),ウラモンアオナミシャク.

 翅を立ててとまっている蛾が時々いて,これが困りものである.必ず立てるポーズを取る種ならそれを同定絞り込みのポイントにすることもできるのだが,現場ではその保証は全くない.どうしたって翅表が分からないと「絵合わせ」ができない.困るのである.
 息を吹きかけたりしても,なかなか開いてくれない.たいていは飛んで逃げられるのがオチ.
 仕方ないので上から隙間を狙って.

 08年07月07日.この蛾はまだ開いてくれていた部類.前翅長8mm.

 これぐらいなら同定の材料にはできそうである.



 常連の同定済みの蛾ならば,翅裏を撮れてラッキーだったりするが,初見蛾だと絶望的な気分になる.


 結局,同定できずに蛾LOVEさんの「虫我像掲示板」にSOSを発信した.
 ここの掲示板は蛾の問い合わせを受け付けている掲示板の中でも,最も敷居が低く(アダルトなスパム投稿に何事もなかったかのように虫関係のレスが付いてそのまま進行していく掲示板は他に類を見ない.管理人の人徳と,さばけた,わたしを除くハイレベルの常連さんたちの力である),しかも確実に,よってたかっての同定のレスが付く頼りになる場所なのである.
 Sativusさん(最近ご無沙汰だなあ.どうしているのだろう)と蛾LOVEさんに同定していただいて「ウラモンアオナミシャク」とのこと.
 皮肉なことに,翅裏の画像が決め手になったようである.講談社『蛾類大図鑑』ではこう.

翅の表面は前種(引用者註:チビアオナミシャク)とよく似ているが,裏面(Fig.9)の斑紋が特異なために区別は容易である.
(p.515)

 なんと図鑑の図版に「裏面の画像」が載っていた.完全に見落とし….


 ウラモンアオナミシャクの学名は Chloroclystis subcinctata .
 前回のクロスジアオナミシャクと同属.この蛾もpost-Eupithecia(カバナミシャク以後)の蛾である. 「薄緑+蝋でコートした」.
 種小名は「sub- 下方を示す接頭辞」+「cinctus 帯を絞めた」+「-atus 所有・類似を示す接尾辞」.「裏側に帯を締めたもの」という相場?