ナミシャク特集(21),キイロナミシャク.

 見かけはそう地味ではないが,なぜか日陰に回ってしまう役回りというのがあって,キイロナミシャクはそういうポジションである.
 検索でのヒット数も少ない.スキマ狙いによって検索での上位独占を目指している(w)拙HPの有力候補なのだが,手持ち画像が残念ながら足りない.


 前回のセジロナミシャクの属名が「Laciniodes」で,これは「ラキニア蝶+似たもの」の意味である可能性が高い.和名風に言ってみれば「ラキニアモドキ」だろうか.
 「もどき」という語は本来はネガティブなものではなく,「対抗する,向こうを張る」という意味だという.だが,そうであっても名称としては従属的であることは否めない.「モドキ」がいなくても「ラキニア」は「ラキニア」だが,「ラキニアモドキ」は「ラキニア」なしでは廃業である.
 学名ではこういった従属的な命名法がしばしばある.「-odes,-oides」ばかりではなく,「pseudo- 偽の」,「mimo- 真似をする」*1など.相場としては,プセウドが「ニセ」,ミモが「ダマシ」だろう.


 キイロナミシャクが,「Pseudo」stegania defectata である.
 「偽Stegania」であるが,ステガニア属というのはエダシャクの蛾.日本には分布していないようだ.「Lepidoptera and some other life forms」の「Stegania」参照.
 「stegania」自体は,「steganos (水を防いで,すっぽり)覆われた」+「-ia 接尾辞」.
 種小名は「弱い,無力な」.属名にしても種小名にしても,どうも元気がない.和名の「キイロナミシャク」の明解さとは対照的である.明解な割りには知名度がないのではあるが.



 07年09月01日.前翅長12mm.
 そんなに見劣りのする蛾とは個人的には思わないのだが,図鑑もその扱いは冷淡である.
 保育社『蛾類図鑑上』.簡明.

触角♂で微毛状,♀で絲状.前翅の小室は2個.
(p.223)

 北隆館『昆虫大図鑑1』はやや詳しく描写する.

♂の触角は微毛状.前翅の小室は2個.前翅では3線が,後翅では2線が接近して走り,前翅の脉3〜6の間で黒褐色の紋をつくる.色彩斑紋の濃淡はあるが,変異の幅はせまい.
(p.196)

 講談社『蛾類大図鑑』.触角に修正が加えられる.

 脈相その他 Asthena と共通点が多いが,交尾期にかなり大きな差がある.触角は♂でも糸状.斑紋に濃淡はあるが,同定は容易である.
(p.496)

 ♀についての言及がないにも拘わらず,「でも」というレトリックを使用している.


 じゃあ触角でも見てみようかということで.

 ダメ.上手く撮れていない.

*1:「mimo-」については,断蟲亭さんに教えていただいた.07年12月23日記事とコメント参照.