ナミシャク特集(24),チビヒメナミシャク.
TVで「われわれ庶民は」なんて言っている連中は大抵信用できない.持ち家や土地を所有している人間はすべてブルジョワであり,階級的敵である.彼らは身分制度において貴族(あるいは名家)に属していないだけの一点で庶民を称しているにすぎない.
わたしは赤っぽい人間であって,プロレタリア革命が起こればいいと思っているのでいまだに借家である.
どうも上の方はかすみがかかってよく見えないのだが,それに対して,下に堕ち出すと底なしである.どこまでも堕ちていく.よく見える.
昆虫も同じであるらしい.上位を表す表現が「オオ」くらいしかないにもかかわらず,下位表現は数多ある.
まずスタンダードなのが「コ」.これは「大」に対して,あるいは標準より小さいということ.まだまだ相対的な小ささである.
「ヒメ」だともう一回り小さい感じだと思う.「マメ」とか「ツブ」もまだまだ中流.
「ケシ」は芥子粒で,正しいあんパンのトッピングしている奴だから相当小さいかと思いきや,例えば「ケシゲンゴロウ」は4.5mmほどもあったりする.割と大きい.
これが「チビ」になってくると相対的尺度を超えた絶対的小ささのニュアンスをおびてくるし,差別語の匂いもする.「チビゴミムシ」は3mm,「チビゲンゴロウ」は2mmである.そんなものはもはや弁証法的にはゴミムシでもゲンゴロウでもない.
さらに「ミジン」(微塵)というカテゴリーがあって,ほとんどホコリである.「ミジンダルマガムシ」は1mm強.もはやそれは虫の最下層と呼ぶべきだろう.
何を書きたいのかといえば,「インターを歌おう」とか「金持ちは皆殺しだ」とかそういうことではなくて,「チビヒメナミシャク」である.
08年07月13日.測定漏れ.
08年06月30日.前翅長10mm.
07年07月06日.前翅長9mm.どれもこれも同じ.
かくのごとく,小型だが分かりやすい可憐な蛾である.
蛾には「チビガ」というジャンルがあって,確かに小さくて吹けば飛ぶようなのだが,実際に吹くと結構頑張って葉にしがみついたりするに違いない.
この「チビヒメ」というのはどんなものだろう.「ヒメナミシャク」の「チビ」なのだろうけれどもねえ.確かにシャクガの中では小型の部類ではあるのだが.
チビヒメナミシャクの学名は Hydrelia shioyana .
属名は前回のキヒメナミシャクと同じ「湿った」.
種小名は「シオヤ」+「-anus (接尾辞)」.命名者は松村松年であるから「シオヤ」は日本の地名か人名である可能性が高いが,調べきれなかった.
「シオヤナミシャク」と「チビヒメナミシャク」とを比べればどっちに軍配が上がるだろうか.後者の方がインパクトがあるのかな.