ナミシャク特集(26),マエモンハイイロナミシャク.

 「安楽椅子探偵」というジャンルがあるが,すっかり情報と戯れるだけの「安楽椅子蛾屋」になってしまっている.もちろん安楽椅子なんて持っていないから,段ボール箱の上にノートパソコンを乗せて,その前に座り込んであれこれ書いている.周りは分厚い図鑑やら辞書やらが積み上がっていたり崩れたりしていて,酒のビンや缶が転がっている.
 他のことはどうでもよくなっている単純な生活.
 世間一般の視点から見れば,これも一種の貧困なのだろうと思う.精神の貧困.


 今回はマエモンハイイロナミシャク.かつては「カシワノナミシャク」と呼ばれていて,保育社図鑑・北隆館図鑑ではそちらになっている.食草が未確認なので「カシワ」が抹消されたとのこと.
マエモンハイイロナミシャク Venusia semistrigata
 08年05月16日.春の蛾である.前翅長12mm.
 横から.
マエモンハイイロナミシャク Venusia semistrigata
 同一個体.ナミシャクは厚みがないので,どうも妙味に欠ける.眼が大きい.


 マエモンハイイロナミシャクの学名は Venusia semistrigata .
 属名は「Venus」+「-ia 接尾辞」.ヴェヌスというのは,もちろん「愛欲の女神ヴィーナス(←英語)」である.蛾マニアも一線を越えるとこのような蛾に情欲をそそられて(;´Д`)ハァハァするものらしい.わたしはその境地にはまだ達していない.
 種小名は「semi- 半分の」+「strix あぜ道,轍(わだち)」+「-atus 接尾辞」.「半分まで細い溝がついている」で,翅の模様を表現したもの.現和名の「前紋灰色」よりはずーーっと適切な命名だと思う.どう訳したものだろう.「ハンスジ」? あまり良くない.でも,そんな相場かもしれない.「ミチナカバナミシャク」? カバナミシャクの仲間と思われそう.


 北海道亜種(こちらが原亜種である)は褐色の「あぜ道」部が薄い.
マエモンハイイロナミシャク Venusia semistrigata
 07年05月07日.前翅長10mm.
 「みんな蛾」に載せてもらった画像.「やけに薄い」という(ありがたい)評をいただいた.


 さて,この蛾が分からない.
マエモンハイイロナミシャク? Venusia semistrigata ?
 07年05月21日.前翅長13mm.
 横脈紋(中央部の黒点)がないので,ずっと「ミヤマナミシャク」としていたもの.今回見直して,「横脈紋のない変異のマエモンハイイロナミシャク」ではないかと.
 「外横線の前縁部の形状」と「中横線の走り方」でミヤマとは違うと思う(「みんな蛾」の「ミヤマナミシャク」参照).それに「時期が早い(ミヤマは夏の蛾)」.
 とりあえず「?」付き.


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 うーーん.HPやらないといけないなあ.まずは画像の差し替えをしたい.けれども( ゚Д゚)マンドクセーで….