ナミシャク特集(34),ウスベニスジナミシャク.
今は1月2日の午前中である.どんどん先送りして更新している.4日の日曜から出勤再開.4日は職場にきっと暖房が入らない.そして6,7,8日と出張である.わたしはどうなってしまうのだろう.
年末年始休暇の目標はアルコール抜き.なんとか半分過ぎまで来た.仕事のストレスのかからないこういう時が酒抜きのチャンスなのである.仕方ないのでコーヒーを飲んでいる.年末に「インスタントの詰め替え」と「何か豆をひいたやつ」とを間違えて買ってしまって,仕方ないのでコーヒーメーカーで落としている.どう考えてもインスタントの方が美味しい.喫茶店でもインスタントコーヒーを出せばいいのにと思う.
あまり動かないので腹があまり空かない.おかげで血糖値は機嫌が良さそうである.その代わり,朝から晩までパソのディスプレイや微細な活字に充ち満ちた辞典と戦っているので頭はモーローとしている.どうせ先は長くない.
コバネナミシャクが一段落して,次はウスベニスジナミシャクである.
見かけはあまり変わらない.
07年05月07日.
中横の帯が強くカーブしていて,横脈紋を挟んで,外横の帯が歯形状.コバネナミとは(おそらく)混同しない.
苫小牧では4月末から5月中旬まで多産する.
08年04月19日.前翅長14mm.
ウスベニスジナミシャクの学名は Esakiopteryx volitans .
属名は「esaki エサキ(昆虫学者の江崎悌三に因むものだろう)」+「pteryx 翅」.途中の「o」はギリシア語の接続母音である.かつては「Lobophora属」(日本にはシロシタヒメナミシャクがいる)に分類されていたものが,独立して新属とされた.
種小名は「volito ふらふら飛びまわる」の現在分詞.蛾は蛾なりに徘徊するらしい.実際は撮影時にはあまり逃げない.むしろ大人しい.5月はまだ気温が低いので動きが鈍いのである.
和名「薄紅筋」は横帯の色からだろう.ところが「緑筋」の個体もいる.
08年04月20日.前翅長16mm.
08年04月11日.前翅長14mm.これは鮮やかな個体.
もちろん図鑑を調べる.保育社『蛾類図鑑上』.
前翅の色彩・斑紋には個体変異が多く,中・外横帯が黒褐色のもあれば,緑色をおびたものもある.
(p.196)
北隆館『昆虫大図鑑1』.
色彩や斑紋の強弱は変異があるが,前翅の帯は緑色のことが多い.
(p.188)
面白い.さて講談社『蛾類大図鑑』.
前翅の2帯は黄緑色斑の列で,基部,外縁,ことに翅頂近くに同じ色をあらわすことが多いが,変色しやすい.個体変異は強く,時には黒褐色帯をもつ個体もある.
(p.466)
ここまで読み比べて,やっと分かった.「個体変異」という語は繰り返されているが,少なくとも「薄紅色」とは書かれていない.とすると,話は簡単で,「ウスベニスジナミシャクは緑色の蛾であって,和名の由来となっている紅色のものは退色個体である」.※おそらく誤謬。
そういえば,わたしも,緑型は春一番のもので5月過ぎには紅型ばかりになる印象を持っていて,08年5月2日の記事にそう書いている.
蛾屋さんたちには常識だったのだろうか.もちろん図鑑から推測するだけではなく,実際に実験などして確かめるべきなのだろうが,わたしは自然科学的な真理の探究者ではない.「人々がウスベニスジナミシャクについてどのように理解してきたか」が分かっただけで相当に満足だったりする.
というわけで変色した個体.
05年5月11日.
定規に乗ってこられては困るのだが,もう測ったからいいや.前翅長16mm.