ナミシャク特集(35),ルリオビナミシャク.
本覚思想というのは「汎神論」の1種なのかもしれないとようやく思い及ぶ.物事は突き詰めると,自分と他人との違いがどうでもよくなるのだろう.
シタコバネナミシャクを抜けて,かなり楽になった.残りは20種強.
珍しく日中の画像.緑ヶ丘公園の公園内トイレの外壁.わたしは利用者がいなければカメラを構えたままトイレの中にも入る.不審だが虫の方が大切である.
ルリオビナミシャク.08年05月12日.前翅長11mm.
苔緑色の美しい蛾だが小さい.この時は眼の高さよりも少しだけ高い所,2mほどの箇所にとまっていたから,この蛾の存在に気付いた人はほとんどいなかっただろう.
ところで更新が1日遅れた理由が,このルリオビナミシャクの学名である.
Acasis viretata viretata .属名が分からない.いかにもギリシア系の固有名詞に見えるのだが,手元の資料からもネットからも見つからない.とうとうamazonにギリシア人名辞典を注文してしまう.ローマ人版は3万を超えるので手が震えてクリックできなかった.イェーガーの学名本は出張から戻っての予定.
とりあえず,「アナグラム」とか「綴り変え」の線を疑っている.
※Emmet『The Scientific Names of the British Lepidoptera』によれば,「a 欠如の接頭辞」+「kasis 兄弟姉妹」.由来は「この属が立てられた時にはモノタイプ(訳者註:この場合は1属1種の意)だったからである.だが現在はそうではない」(p.177)とのこと.
属名は「viretum 緑色,緑の草地」+「-atus 接尾辞」.亜種名が反復しているが,これは新たな亜種が確定すると,もともと亜種名を持たなかったオリジナルの側は自動的にそうなるのである.
例によって「UK Moths」の記事「Yellow-barred Brindle Acasis viretata」.
この蛾の英名は「Yellow-barred Brindle」.「黄帯斑蛾」とでも訳せそうで,もちろん「キスジホソマダラ」と混乱するのである.
ルリオビナミシャクの方はあまり黄色くないのだが,「UK Moths」は言い訳をしている.上記記事から拙訳.
この種の英名(「黄帯の斑」)は野外で通常見られる色合いを示している.発生したばかりの新鮮な状態ではこの種は普通緑色だが,すぐに色褪せる.
なるほど前回の「ウスベニスジ」と同じ経緯.俗名とはそういうものであるようだ.