ナミシャク特集(39).キガシラオオナミシャク.
チョウの方が蛾に比べて親しまれていて,その理由は色々あるのだが,その一つにサイズもあるように思う.
チョウは大きい.モンシロチョウでさえ前翅長が25mmほどある.蛾の基準なら偏差値55程度.駅弁公立大でよければ楽に合格圏である.
思えば前翅長10mmのモンシロチョウは「白い小蛾」に見えるだろうな.チョウがどれもこれもシジミやセセリのサイズなら「ただの羽根虫」としか認知されなかったに違いない.
大きめのナミシャクが続く.灯火下では大物である.とはいえ,これでもモンシロチョウとオオモンシロチョウの間くらいのサイズ.
キガシラオオナミシャク.07年08月05日.前翅長29mm.
この属の蛾はとまり方に癖があって,要するに「おっぴろげ」である.後翅を腹部に寄せてとまる蛾がほとんどの中にあって,この蛾は脇が開いている.おかげで翅が重そうにぶらぶらしていて,付け根が心許ない.翅がもげてしまうとは思わないが,余分に疲れそうである.
同個体.顔はナミシャクである.
キガシラオオナミシャクの学名は Gandaritis agnes .
属名は,おそらくシルクロードで有名な「ガンダーラ」+「-itis 所属の接尾辞」.属をたてたMooreはアジアの蝶の研究者で,その他にもサンスクリット由来の学名を多く命名しているとのこと.
種小名は「agnos 神聖な,清浄な」と思われる.
というわけで,この蛾に出会った時は,もちろんあのヘレニスティックな仏教美術に思いをはせなければならない.手を合わせてもいいかもしれない.
そもそも,いつでもどこでも,合掌するのはよいことなのである.
07年08月05日.前翅長30mm.
こういうポーズをとるとき,世の一部の人々はこれがチョウなのか蛾なのか不安の渦の中にたたき込まれるだろうが,わたしの知ったことではないのである.