『英国産鱗翅目の学名』から(1)
<1> リンネによる,鱗翅目における二名法.
- リンネは学名に「属名+種名」の「二名法」を導入したと知られる.ただし,現代の学名に慣れている者は頭を切り換えていく必要がある.
今日考えられている「属」の概念はリンネにはない.リンネの「属」は,現代なら「科」や「上科」にあたるものである.
※「genus」は多くの種を含む大きなまとまり,と見なしていたものらしい.
(p.16)
・(妄想)おそらく,神の創造における「多様性の調和」の観念があるのではないだろうか.それぞれの原型に多様性がバランスよく与えられる.
<2> リンネによる鱗翅目の分類.
- 『自然の体系』(第10版,1758)において,鱗翅目は3つの属に分けられている.すなわち,
- リンネは,Papilioについてさらに6群に分けている.リンネにおけるチョウの分類は,平嶋義宏『蝶の学名』(九大出版会)に詳しい.
- スズメガは蛾の中でも特別扱いと言うよりは,蛾や蝶とは異なる第3の鱗翅であると考えた方が適切のように思う.
- Phalaena「蛾」について,
- phalainaはアリストテレスが蛾に用いている語.この語は鯨や貪食の怪物を意味することから,イガの食害の能力から蛾に転じられているのかもしれない.
- しかし学識者たちは,この語をpallos(男根)由来と考えてきた.ギリシアでは,蛾は精液に引きつけられるものであり,精液から発生することさえあるとされたからである.
- 光に引きつけられることから,paos(光)と同語源であるという説もある.
(p.18)
※現代の知見の立場から,過去の人々の知識をあざ笑い無価値なものとみなす人々が存在する.わたしは彼らに与しない.彼らは結果を利用することに急で,自分で考えることを軽んじる人々である.