『英国産鱗翅目の学名』から(3)

 <4−1>リンネによる分類と現在の分類との齟齬.「ヤガ」と「メイガ」.

  • リンネは「蛾(Phalaena)」(←そういう「属名」である)を,とまり方や触角によって分類するのだが,それ故に現代の分類とは合わない種が多数出てくる.


 (以下は原著p.21を元に構成.画像リンクはもちろんyyzz2による.略号は記事末尾に)

  • これらは語尾の秩序に影響しない.
  • 「メイガ(Pylalis)」に分類されて語尾が「−alis」になった「ヤガ(Nocturnae)」.

強い櫛歯の触角を持つことから,この蛾がリンネの定義上Noctuaeから除かれるのはともかくとして,Podaは混乱しているように思われる.彼はこの蛾をPhalaena(Geometra)として記述しており,Geometraなら「−aria」の語尾でなければならない.ところが,彼は,Pyralisに属する「−alis」語尾を用いているのである.Podaは二股をかけたのかもしれない.リンネの分類におけるGeometraとPylalisを統合する単一の科としてのPhalaenaが作られたのはその後である(Fabricius,1775).(p.203)

    • ※要するに命名の時点で「シャクガ」と「メイガ」の区別が揺らいでいたということだろう.Fabriciusはそれをまとめてしまった.
    • ※高弟Fabriciusはリンネの分類を初めて本格的に改変した人物.1775の数字は記憶されていいだろう.リンネの分類がどのように変化していったかは後述することになる.
    • ※Fabriciusはこの蛾をBombyx(属名の再編があるものらしい)としている.
    • ※わたしにはやっぱりヤガに見える.現在の知識がわたしの眼をゆがませてしまっているのだろうか.
  • アツバ類はとまった時の翅の形状から「メイガ」扱いである.

(つづく)


【略号】
UKBUK Moths
SVF:Svenska fjärilar
MBE:Moths and Butteflies of Europe