『英国産鱗翅目の学名』から(5)

<3−2>リンネとその後継者によるスズメガの分類.

  • リンネは鱗翅目を3つの属,すなわち「蝶(Papilio)」「スズメガSphinx)」「蛾(Phalenae)」に分類している.
    • 「蛾」を更に「研究上」7つに区分した.(<3>で詳述)
  • それ以外にも,「属」に付随する様々な区分を行っている.
    • 「シャクガ(Geometrae)」は「櫛歯触角」と「剛毛触角」の2グループに細分される.(既出)
    • 「蝶」はまず6グループに分けられ,そのいくつかが更に細分されて都合10グループを形成する.(平嶋『蝶の学名』を参照)
      • ※「グループ」と訳出したのは,現在の分類のような「階層性」を持っていないことを示すためである.
    • ※これらのグループは単に特徴が提示されるだけで,命名されていない場合が多い.
  • ※原著はやっかいな本で(もともとが分類学史の本ではないから仕方ない),リンネとその後継者による「スズメガの分類史」について,項目「Sesia属」に記述されていた.
    • ※Sesiaといえば,スカシバガ(みんな蛾)である.例によっての,まとめ.
  • ※リンネはスズメガのポイントを外縁に見ている.
  • ※現代人のわたしには,マダラガはどうしてもスズメガに見えない.
  • 「Sesia」は,Fabriciusが3番目のスズメガ区分につけた名前.
    • スカシバガ(英:clearwing)」
    • スキバホウジャクやオオスカシバ(英:bee hawk-moth)」
    • ホウジャク(英:humming-bird hawk-moth)」で構成される.
      • ※「スカシバガ」は例のスズメバチに擬態している蛾である.「正統」なんだなあ.顔つきがだいぶん違うのだけど.和名ならスズメつながり.
  • 後年,このグループの見直しが行われる.
    • Latreilleは「Sesia」を「スカシバガ」に限定し(1804),Fabriciusは「ホウジャク」に限定した(1807).
    • Latreilleに先取権があり,現在「Sesia」はスカシバガ科の一属に用いられている.

(p.66)

  • ※そもそも「スズメガ」がどう再編されたかは後述.
  • ※フィールドで見かけたスカシバガやマダラガに,遠く(と言ってもたかが200年前だが)スズメガの面影を探してみるのも面白い.
  • ※次回は<4>に戻る.「シャクガ」と「メイガ」について.


【略号】
UKM:UK Moths
みんな蛾:【みんなで作る日本産蛾類図鑑V2】