『英国産鱗翅目の学名』から(5)
<3−2>リンネとその後継者によるスズメガの分類.
- リンネは鱗翅目を3つの属,すなわち「蝶(Papilio)」「スズメガ(Sphinx)」「蛾(Phalenae)」に分類している.
- 「蛾」を更に「研究上」7つに区分した.(<3>で詳述)
- それ以外にも,「属」に付随する様々な区分を行っている.
- 「シャクガ(Geometrae)」は「櫛歯触角」と「剛毛触角」の2グループに細分される.(既出)
- 「蝶」はまず6グループに分けられ,そのいくつかが更に細分されて都合10グループを形成する.(平嶋『蝶の学名』を参照)
- ※「グループ」と訳出したのは,現在の分類のような「階層性」を持っていないことを示すためである.
- ※これらのグループは単に特徴が提示されるだけで,命名されていない場合が多い.
- ※原著はやっかいな本で(もともとが分類学史の本ではないから仕方ない),リンネとその後継者による「スズメガの分類史」について,項目「Sesia属」に記述されていた.
- ※Sesiaといえば,スカシバガ(みんな蛾)である.例によっての,まとめ.
- リンネは「スズメガ(Sphinx)」を4区分あるいは亜科(※現代の表現である)に分けている.
- 翅がギザギザになっている,正統のスズメガ.
- 例えば,Smerinthus ocellata.
- [画像]http://ukmoths.org.uk/show.php?id=1694 (UKM)
- ※日本には当該種なし.画像をみれば分かるようにウチスズメの属である.
- 翅が完全(ギザになっていない)である,正統のスズメガ.
- 例えば,Agrius convolvuli. ※和名「エビガラスズメ」.
- [画像]http://www.jpmoth.org/Sphingidae/Sphinginae/Agrius_convolvuli.html (みんな蛾)
- 翅が完全(ギザになっていない)で,尻に毛束のある,正統のスズメガ.
- 後述.
- 外見や幼虫の異なる,外様のスズメガ.
- 例1 :Adscita属. ※マダラガ科クロマダラ亜科の一属.
- [Adscita画像]http://ukmoths.org.uk/show.php?id=397 (UKM)
- ※日本には当該属なし.
- [クロマダラ亜科画像]http://www.jpmoth.org/Zygaenidae/Procridinae/F0000Thumb.html (みんな蛾)
- 例2 :Zygaena属. ※マダラガ科マダラガ亜科の一属.
- ※日本には「ベニモンマダラ」が分布.
- [ベニモンマダラ画像]http://www.jpmoth.org/Zygaenidae/Zygaeninae/Zygaena_niphona_niphona.html (みんな蛾)
- 「Sesia」は,Fabriciusが3番目のスズメガ区分につけた名前.
- 「スカシバガ(英:clearwing)」
- 「スキバホウジャクやオオスカシバ(英:bee hawk-moth)」
- 「ホウジャク(英:humming-bird hawk-moth)」で構成される.
- ※「スカシバガ」は例のスズメバチに擬態している蛾である.「正統」なんだなあ.顔つきがだいぶん違うのだけど.和名ならスズメつながり.
- 後年,このグループの見直しが行われる.
- Latreilleは「Sesia」を「スカシバガ」に限定し(1804),Fabriciusは「ホウジャク」に限定した(1807).
- Latreilleに先取権があり,現在「Sesia」はスカシバガ科の一属に用いられている.
(p.66)
- ※そもそも「スズメガ」がどう再編されたかは後述.
- ※フィールドで見かけたスカシバガやマダラガに,遠く(と言ってもたかが200年前だが)スズメガの面影を探してみるのも面白い.
- ※次回は<4>に戻る.「シャクガ」と「メイガ」について.
【略号】
UKM:UK Moths
みんな蛾:【みんなで作る日本産蛾類図鑑V2】