ナミシャク特集(50).クロオビフユナミシャク.
季節は巡って秋から冬へ,と言っても同じ11月の同じ頃合いである.広義のフユシャクたちが出てくる.
風が冷たい.彼らだって灯火には興味はあるのだろうけど,いかんせん飛ぶ力が弱い.大漁というわけにはなかなかいかない.
そうやって,蛾のシーズンはいつの間にか終わっていく.
クロオビフユナミシャク.08年11月03日.前翅長17mm.
首のあたりから赤みが走っているのは,看板を照らす電球にポジションが近すぎたから.
蛾の研究が進んできて,従来は同じ種とされていたものが幾つかに別種として分けられるようになってきた.知識の精緻化ともいえるし,分類学者はそれが仕事の一つなんだしとも言える.ただ,わたしのようなアバウトなアマチュアにとっては悩みのタネが増えるのも確か(例えば,わたしには「マイマイガ」と「エゾマイマイ」を見分ける自信はない).
この蛾もそうであって「クロオビフユナミシャク」と「ヒメクロオビフユナミシャク」に分けられた.これが難しい.
講談社『蛾類大図鑑』から.「ヒメクロオビナミシャク」の項.
前種にごく近縁で,長い間混同されてきた.
わたしなどが分からなくて当然なのである.
♂の触角の幹はいっそう細長い.前翅は前種ほど黒っぽくなく,横線はいっそう灰色をおびる.中央帯は前種では後縁に対して垂直で,個体によっては第1室で外側に傾くが,本種では中室内と第1室で角ばるか,全体として外方に傾斜し,後縁部で外横線に接近する.一般に前種より小型で,前翅長はいっそう丸みをもつ.
(p.491)
結局,交尾器しか決め手にならないという話である.
※レトリック過剰.下のmothprogさんのコメント参照.
というわけで,上の画像は「おそらく」クロオビフユナミシャク.
クロオビフユナミシャクの学名は Operophtera relegata .
属名について以前の記事では「分からない」としたが,今はEmmetの本がある.拙訳.
Oporophtheraの印刷ミス.opōra,果物.phtheirō,破壊する.冬蛾の幼虫による果樹への被害から.
(『The Scientific Names of the British Lepidoptera』,p.172)
複合語の前節も後節も間違っていた.「0点」.(ノД`).
この種は英国にはいないので種小名は自力で.「遠ざけられた,追放された」.意図は不明.
もう1枚.
同日.同個体.明かりの影響が更に強く出てしまった.こんなものを補正する技術はない.そもそも,目にもこんな色に見えるし,仕方ないようにも思う.
とにかく眼がでかい.フェロモンで♀を探すに違いないのだが,どうしたことだろう.
後ろにごちゃごちゃ写り込んでいるのは,クモの古巣で死んでいる羽根小アリたちの残骸.