Emmet『英国産鱗翅目の学名』から(8)

<5−1>リンネ以後〜鱗翅目の「属」について.「属」と「科」.

  • ※「個」から「普遍」へさかのぼり,「普遍」から「個」へ舞い降りることで,人間の理性を神の創造のそれに近づけることが分類学のテーマであるといえる.西洋の科学が常にキリスト教にその動機付けを負っていたことを忘れてはならないのだが,これからの話に直接は関係ない.
  • 初期の昆虫学者が「上種分類群(種よりも上位の分類)」のために用いる語は,今日のそれとは異なる.
    • リンネと後継者が鱗翅目の主たる区分に用いた「種 genus」は,今日の「科 family」または「上科 superfamily」に対応している.
    • 彼らが下位の区分を作るとき,新しい下位分類群は「family」と呼ばれた.
      • 「種」が「科」を含む.(※現代とは逆.)
  • ※哲学でも「subject」と「object」の意味が近世に入れ替わった.どうも学問の世界ではそういうのはしばしばあるようだ.
  • 「属」と「科」の例.Ochsenheimerの1816年の著作.
    • Hipparchia「属」77種を,7つの科(名称なし)に分けている.
      • Hipparchiaは現在の「Satrynae亜科(ジャノメチョウ亜科)」に対応し,7科はいくらかの修正のもと,亜科の下の属になっている.
  • わたし(Emmet)は,最初に用法を逆転させた人物とその日付を確定できていない.

(p.25)

  • ※『羅和辞典』をチョロチョロッと引いてみると.意味がだいぶん重なってはいるのだが大筋で「genus」が「生まれ,民族,人種」で,「familia」が「家族,郎党,徒党」だから「genus」の方が言葉的には上位概念なのが本来なのだろうと思われる.