Emmet『英国産鱗翅目の学名』から(9)
<5−2>リンネ以後〜鱗翅目の「属」について.「Alucitae」の再編.
- ※リンネの分類体系に加えられていった変更を,これからしばらく追うことになる.
- ※とはいえ,まだリンネの次世代にとっては,現在の「属」概念はまだ遠い.
- 例えば1775年のFabriciusによる「Zygaena」はまだ下位分類ではなく,未だリンネの分類上の「family」である.
(p.25)
- リンネ体系に加えられた最初の名前は,Geoffroyによる1762年の「Pterophorus」.
- すなわち,Geoffroyはリンネの「Alcita」(現在のトリバガ科+ニジュウシトリバ科)を「Pterophorus」の名で代替した.当時は先取権のルールがなかったので当時の著述家たちは後者を用いるようになった.
- しかし,Geoffroyはこの名称を種名と組み合わせなかったので,命名のルールができた時に,Pterophorusをはじめて「family」として正しく用いたSchäfferが命名者とされた.
- ※要するに,Gは単なる呼称として用いていて,分類とはしていなかったということだろう.
- 「Alucita」の名は,今度は現在の「Coleophora」や「Argyresthia」のような「羽毛状の翅」のTinaea(リンネ分類の「イガ」)に当てられたが,結局使われなくなった.
- Latreilleは1796年,ニジュウシトリバをトリバガから分離して「Orneodes」とし,この名は20世紀に入っても用いられた.
- リンネの命名「Alucita」を復活させた時,Alcitaはオリジナルの2種類のうちで「蚊(ガガンボ)」に似ていない方の蛾を示すことになり,Orneodesはシノニムとされた.
(pp.25,123,140)
- ※というわけで,現在はトリバガ科が「Pterophoridae」,ニジュウシトリバが「Alucitidae」となっている.「科に歴史あり」.
リンネからGeoffroyへ,ここで命名上のの慣例ができる.
- リンネがトリバガにギリシア語由来の名を付け,Geoffroyが新名称を付ける時それに倣ったことから,属名はギリシア語から作られるべきという(リンネが決めたのではない)慣例ができたと思われる.
- 種名は普通はラテン語から作られる.
(p.123)
- ※というわけで,わたしは結局ギリシア語のLexiconを買わねばならなくなったのである.図鑑よりは安いのですけどね.
- 次回は,今回のはじめに触れた1775年のFabriciusである.