出張,札幌へ(3)。研修2日目。完了。

(承前)
 朝食メニューはやっぱり昨日と同じ。クリーム煮が,肉団子のどろどろしたものに変更されただけ。肉団子といえば楳図かずおの漫画では人間の髪が混入しているに決まっているのだが。


 今日は会場が駅から離れているので,さっさとチェックアウト。カードキーともサヨナラ。地下鉄の雑踏へ。
 乗り継ぎも順調。かくして,早すぎた。受付まで30分以上ある。時間をつぶさねばならない。そうやって人生の少ない残り時間を更に浪費していく。
 カメラを鞄から引きずり出す。勤め人たちの急ぎ足の歩行を邪魔しながらシャッターを切っていく。



 歩道には転倒防止のごま塩が一面に振りまかれている。胡麻であろうが粗挽き黒胡椒であろうが,わたしにかかれば滑るものは滑るのであって,そうするとカメラが危険である。痛いのは我慢すればすむが,カメラが壊れると直すに金がかかる。



 「眼と口」さえあれば顔に見える。



 歩道橋の根元。その他に路上に目立つのは,煙草の吸い殻と,コンビニのレシートらしき紙片と,歩き回る人間たち。



 放置された植木鉢。



 放置された炊飯器。



 雪山。



 上と下に同時に注意を払うのは普通は無理である。


 午前中は講演。
 阪大の森安孝夫氏の,ユーラシア西方では途絶していたマニ教元朝では生き残っていて,その絵画が日本にも数点伝来しているという話。
 マニ教については,クセジュ文庫で読んだ程度の知識しかない。折衷的であるというだけでわたしなどはすぐに軽んじてしまうのだが,どうも馬鹿にしたものではなく案外しぶといらしい。でも嫌い。
 午後は“identity”の概念を高校生にどう教えるかとか何とかいう論議。だから,わたしを指名したってわたしはエリクソンは1冊も読んでないんだってば。まして,動悸を抑えるために安定剤を倍量飲んでいるしねえ。ここに座っているのは10年前のわたしじゃあもうないんだよ。


 神経はズタズタだし,鞄は重いし。地下街でラーメンを食べてから電光石火で都市間バス。帰苫。
 乗ったタクシーの運転手は昭和28年から走っているという。「社長」ではなく,「親方」という用語を用いていた。へえ。なるほど。