「第36回みちのく会」探訪記(8)。
(承前)。
【2月28日午前】
305号室は北海道関係者の4人部屋。
目を覚ましてまずトランキライザーを飲むのは朝の儀式。それから人々は早速,虫の話である。「虫脳」状態。人間としてかくありたいものである。
一人は現在ゴミムシ屋をしていて,北海道の美麗オサムシを餌にしてゴミムシと交換しているのだという。
朝食はバイキング形式。
挽肉を練って固めたような邪悪なものを避けると,どうしてもこんな盛り合わせになってしまう。昨夜よりははるかにマシな食事とはいえ,根菜が不足。
朝食後会議室へ。横断幕も大分疲れてきた。
お楽しみ「話題提供」(要するに研究発表みたいなもの)である。
その1は「中国ヤガ科の概観」。
まだ中国では研究者が少なく,しっかりしたモノグラフができていない印象を受けた。とにかく広大な地域である。新種はともかくどれほどの亜種が見つかるかと思うと目がくらむ。
蛾たち。
その2。「最近のヤガ科の分類」。
わたしが今回最も楽しみにしていた発表。
・ヤガは近年特に上位分類が変動している。今日は,この時点までの勉強の報告。
・翅脈の特徴から,ドクガ科,ヒトリガ科,ヒトリモドキ科,コブガ科をヤガ科の亜科に降格する見解がある。
・ミッチェルによるタンパク質の分析から,ヒトリモドキ科(亜科)はクルマアツバ科と姉妹群を,ヒトリガ科(亜科)はテンクロアツバ亜科と姉妹群の関係にあるらしい。
(感想)Σ(゚д゚)! 複雑怪奇なこと,欧州情勢に勝るとも劣らないではないか。
以下,当日配布のレジュメからの任意のまとめ。[ ]はyyzz2による補足。
「今回の[学研の]標準図鑑で蛾類大図鑑(講談社 1982)と大きく変わった点は」
1。旧キノカワガ亜科と旧リンガ亜科をコブガ科へ移動し,[7つの亜科を設定する]。
(シンジュキノカワガの帰属が不明。ヤガではない新しい科が必要かも)
2。旧セダカモクメ亜科は,Cucullia属(セダカモクメなど)に限定。
他は3つの亜科へ。ツメヨトウ亜科,モクメキリガ亜科[「みんな蛾」のエゾモクメヨトウ類],新キリガ亜科。
3。新キリガ亜科を設定する。
(この中に例えばタデコヤガのような,いわゆる「コヤガ」が多く入ってくる)
(「タデキリガ」に改称してしまうべきだろうか)
4。カラスヨトウ亜科は,Amphipyra属(カラスヨトウなど)に限定。
(アオイガ亜科,ヒメヨトウ亜科[「みんな蛾」のホシミミヨトウ類と,ヨトウガ亜科の一部],ツマキリヨトウ亜科を置く)
5。ヨトウガ科からナナメヒメヨトウ亜科,コヤガ科からノシメコヤガ亜科を分離。
6。旧コヤガ亜科をキマダラコヤガ亜科4種に限定。
ベニコヤガ亜科,アヤホソコヤガ亜科,シロフコヤガ亜科に分割し,一部は他亜科へ。
[いわゆる「コヤガ」はすっかり分割されてしまう。もともと寄せ集めっぽい亜科ではあった]
7。シタバガ亜科の一部をトモエガ亜科へ移動。[8を参照]
8。旧クチバ亜科を分割。
トモエガ亜科,エグリバ亜科,シタバガ亜科へ移動。
また,テンクロアツバ亜科,ムラサキアツバ亜科,ミジンアツバ亜科,ベニコヤガ亜科[6を参照],アツバ亜科,ベニスジアツバ亜科,カギアツバ亜科を設定する。
9。モクメヨトウ[ヨトウガ亜科]をモンヤガ亜科へ移動。
10。ウスクモチビアツバ[シタバガ亜科]は帰属亜科不明。
これらの分類は1年もすればまた変わってしまう可能性も…。
「標準図鑑」はあと2〜3年で出版という話。
そこでは和名の大改称の大鉈が振るわれるかもしれない。
((((;゚Д゚)))ガクガクガクブルブルブル オレシラナイ